# サステナビリティ戦略を成功に導くカギは、「伝える順番」と「伝え方」のさじ加減


目次

  1. 「ゴーイングコンサーン」企業を目指すには、「サステナブル」であることが不可欠
  2. ソーシャルプロダクツがはまりがちな罠
  3. 「ビジネスと社会課題の解決」のバランスが取れたソーシャルプロダクツ
  4. 最後に

数年前から、中期計画の軸にサステナビリティをおき、サステナビリティ経営を標榜する企業が増えてきました。自社の利益をどうあげるか?という利益至上主義ではなく、環境・社会に配慮しながら、経済性も求めていくということです。この動きは、社会に求められているから、という義務感からではなく、サステナビリティが経営において重要なキーになると気づいたからではないでしょうか。今回は、サステナビリティ戦略を成功に導くカギについて、「伝える順番」「その伝え方」などの側面から考察していきたいと思います。

「ゴーイングコンサーン」企業を目指すには、「サステナブル」であることが不可欠

今後のビジネスにおいて、環境や社会の課題を無視していては、ビジネスチャンスや利益が得られなくなるリスクはますます高まります。例えば、

など。こういった事態へのリスクヘッジのためにサステナビリティに対応しなければいけない、と捉えることもできますが、そもそも企業は業績を上げ、利益を出し続ける存在(ゴーイングコンサーン)であるべきです。そしてその前提は人々が生き生きと暮らせる環境と社会があっての話。

つまり、企業は持続可能な社会をつくる(サステナブルな)存在でなければ、ゴーイングコンサーンにもなりません。

言い換えれば、「社会性がなければ市場性もない・存在意義もない」という時代。それは、商品やサービスの価値に、環境問題や社会問題の解決が含まれていなければ選択されない時代と言えます。

コンサルタントコラム_サステナビリティ戦略を成功に導くカギは、「伝える順番」と「伝え方」のさじ加減_TOP_image1_(リブランドならYRK&)

ゴーイングコンサーンを目指す企業は、事業そのもの(商品やサービス)でサステナビリティに取り組むべきで、そのアウトプットが「ソーシャルプロダクツ」です。ソーシャルプロダクツとは、「人や地球にやさしい商品やサービスの総称」です。

ソーシャルプロダクツがはまりがちな罠

私自身、ソーシャルプロダクツ専門ショッピングモール「SoooooS.(スース)」と、(一社)ソーシャルプロダクツ普及推進協会(APSP)のソーシャルプロダクツ・アワードの運営を通じて、この10年、非常に多くの様々なソーシャルプロダクツに出会ってきました。

その中で解ってきたことは、ソーシャルプロダクツは以下の2つに大別できるこということです。そして、ユーザーのすそ野を広げてビジネスを拡大しているのは②のパターンです。

想いは強いがパイが広がらない(想い先行の罠)

①は、起業や活動の根本となるフィロソフィがしっかりあり、強い想いで立ち上がったもの。
ビジネス課題よりも、社会や環境課題の解決に比重があるパターンが多く、その想いや活動に共感するお客様がコアなファンとなり、事業継続に寄与しています。

お客様は、社会課題への関心が高く、実際に消費という行動を通じて、自分のできることを行おうという実践派と言えます。

しかし、強い想いが先行してしまい、モノとしての価値と価格が見合わない商品やサービスも多く存在します。いわゆるマーケティングミックスの4Pバランスが取れていないケースです。

商品性が先、想いは後で(サステナブル要素のさじ加減)

②は、サステナビリティを重視はしているが、それを前面に押し出したメッセージを発するのではなく、商品性がトリガーとなり、お客様とのコンタクトを生み出すもの。

その後、その商品の詳細を知る中で、サステナビリティ情報にも触れていき、「実はサステナブル」なんです、というコミュニケーションの順序。

これがすなわち「ビジネスと社会課題の解決」もしくは、「商品性と社会性」のバランスの違いです。

ビジネスの視点が弱ければ、結果として売上や顧客層のパイが広がらず、ビジネスはスケールしません。
もちろん、そのビジネスオーナーが何を成功とするか?何を目標とするか?という考え方によりますので、どちらかが正しく、どちらかが誤りという話ではありません。

ただ、ビジネスのゴーイングコンサーンを目指すのであれば、お客様(ファン)の層は分厚く、売上も多い方が好ましいのは間違いありません。

コンサルタントコラム_サステナビリティ戦略を成功に導くカギは、「伝える順番」と「伝え方」のさじ加減_TOP_image2(リブランドならYRK&)

商品やサービスをプロモーションする際には、はじめに「フィロソフィ」や「背景にある社会課題」などを伝えたくなりますが、ファーストコンタクトの壁が高くなってしまっては、社会的意識の高い一部の層にしか知ってもらえない商品になってしまう可能性があるので注意が必要です。

「ビジネスと社会課題の解決」のバランスが取れたソーシャルプロダクツ

ラッシュジャパン|ニューシャンプーバー

スキンケア、ヘアケア、バス用化粧品等を展開する「LUSH(ラッシュ)
リアルショップの存在感が強く、購入したことのない人でも、ご存じのブランドではないでしょうか。
カラフル&ポップ、強い香り、実演販売といったイメージがあるのでは?と想像しますが、実は、イギリスでの創業時からエシカル(倫理的)な精神が引き継がれる企業であることをご存じでしょうか。

例えば、

など。
ビジネスを通じて人や地球に悪い影響を与えないことを追求していますが、このような情報は押し付けられることなく、自身の関心度と連動して目や耳に入ります。
ラッシュには「エシカル憲章」がありますが、それ以外でエシカルという言葉を強調していません。それは、エシカルは特別なことではないという思いからですが、そのことが生活者とラッシュとのファーストコンタクトをソフトなものにしています。
ショップと商品の力が強く、エシカルとビジネスの両立に成功している企業です。

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バターのいとこ

ちょっとユニークで印象に残るネーミングのお菓子「バターのいとこ
無脂肪乳から作ったミルク感たっぷりのジャムをバターが香り立つゴーフレット(ワッフル)生地でサンド。「ふわっ・シャリッ・とろっ」の3つの食感が楽しめる那須のしあわせ新銘菓です。

このようなサステナブル要素は、「生産者さんも、観光客の方も、地元の方も笑顔にする“三方よし”な商品」として紹介されています。
この商品のファーストコンタクトはやはりユニークなネーミングとかわいいロゴやパッケージデザイン。そして基本価値の「おいしさ」の口コミでした。さらに、当初は手に入りづらいという希少性もあってSNSで人気が広がりました。

コンサルタントコラム_サステナビリティ戦略を成功に導くカギは、「伝える順番」と「伝え方」のさじ加減_TOP_image4(リブランドならYRK&)

最後に

LUSHとバターのいとこ、どちらもサステナブル要素を強く打ち出していないため、生活者も気軽に商品にコンタクトが取れることから、ビジネス拡大へとつながったと言えます。思想やビジョン、社会的な意義があってもそれを「伝える順番」、その「伝え方」のさじ加減がビジネスの成否に影響するということです。

コンサルタントコラム_サステナビリティ戦略を成功に導くカギは、「伝える順番」と「伝え方」のさじ加減_TOP_image5_(リブランドならYRK&)

まず大前提として、社会的な意義(サステナブル要素)が伝わらなかったとしても、「魅力的な商品」であることが重要です。

その上で、サステナブルな要素を伝える順番と伝え方について、生活者の立場に立ってバランスを取ることが、ソーシャルプロダクツの成否に、さらにはサステナブルでゴーイングコンサーンな企業実現への第一歩となるのです。


コラム_サステナビリティ戦略を成功に導くカギは、「伝える順番」と「伝え方」のさじ加減_フォト_木村有香(リブランドならYRK&)

1998年 株式会社 YRK and入社。2011年社内の新規事業構築プロジェクトを推進し、「持続可能な生活(社会)の構築をITとマーケティングを通してサポートする」ことをビジョンに、人や地球にやさしい商品・サービスであるソーシャルプロダクツ専門のショッピング・情報サイト「SoooooS.(スース)」の立上げに参画。現在は、企業のSDGs本業化を通じ、生活者・企業の力で社会的課題を解決・緩和する世界の実現を目指す。


株式会社 YRK and
SDGsコンサルティングチーム シニアマネージャー
株式会社SoooooS.カンパニー 代表取締役
木村 有香
Writer

株式会社 YRK and
SDGsコンサルティングチーム シニアマネージャー
株式会社SoooooS.カンパニー 代表取締役
木村 有香

2011年YRK&社内の新規事業構築プロジェクトを推進し、「持続可能な生活(社会)の構築とITとマーケティングを通してサポートする」ことをビジョンに、人や地球にやさしい"ソーシャルプロダクツ"専門のショッピング・情報サイト「SoooooS.(スース)」の立ち上げに参画。2020年より株式会社SoooooS.カンパニー 代表取締役に就任。また、「SDGsをビジネスに活かせば、会社が変わる」を合言葉に、企業のSDGs本業化を推進。生活者・企業の力で社会的課題を解決・緩和する世界の実現を目指す。

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