IoT・データドリブン・機械学習・AI。まだまだ我々の会社では…と思っていたデジタルトランスフォーメーション(以下、DX)が2020年は、いきなり皆様の身近な存在になったのではないでしょうか?
オンライン会議・オンラインセミナー・オンラインショッピング。使う側の立場で考えると、「思っていたより」も便利で「思っていた以上」に楽になったと感じている方も多いと思います。
そんなデジタルの世界が私たちへもたらす恩恵は、単にユーザー視点で「便利になった」だけではありません。実は、便利に感じる背景には、「誰が」「なぜ」「どこで」「どのようにして」その行動に至ったかといった細かな「データ」が存在し、それによって個々に合わせた最適な利便性を提供することができています。つまり、「データの力」によって、商品やサービスは、飛躍的にその価値を向上させることができるのです。例えば、AMAZONや楽天の“おすすめ”、いわゆるレコメンド機能がそれにあたります。コロナ禍で私たちは、その利便性を、より生活の中で実感することができたのではないでしょうか。
一方、「データの力」は、サービスの価値向上だけにはとどまりません。経営そのものの成長を向上させることにまで及びます。近年世界で活躍する企業の多くは、経営の中核にデータを組み込み、素早く効率的にPDCAを回すことで、競争優位性のある持続可能なブランドの基盤を構築しています。
例えば、作業着や安全靴等を取り扱う「ワークマン」では、データドリブンを実行するために、入社年次に合わせたデータ研修を導入し、全社員がデータに基づき現場レベルで事実を捉え、仮説を立てて、改革できるPDCAモデルを構築しています。その結果、「変化に強い組織」の実現に成功し、コロナ禍においても大幅な増収増益を果たしています。もはや、作業着のお店という枠を超え、「ワークマン」という一つのブランドにまで成長してきています。
事実を読み取るだけでなく、予測まですることが当たり前になっていきつつある市場の中で、今までの“勘”や“経験”で打ち手を実行していては、ブランドの成長も不確実性が高まってしまいます。安定的な経営成長を図るためにも、データを把握することは欠かせません。
さて、もう一つデータが活躍する場面があります。それは「生活者視点でのブランドコンディションの把握」です。前述でご紹介した「データの力」は、サービスの向上や、企業成長のためのデータ活用でしたが、実は「ブランド価値の成長」にも非常に役立ちます。生活者視点でブランドの今の状態を正確に把握することや、そのブランドを確実に成長させるためにデータ観測をすることは、特にこのコロナによって様変わりした世の中において重要になってきています。コロナにより、ブランドと生活者の関係性はリセットされました。いわゆる、ニューノーマル時代です。そのような環境下で、生活者の求める価値とブランドの提供価値に“ギャップ”が生まれてきているケースが多く見られ、私たちにも多数ご相談をいただきます。
では、「ブランドコンディションの把握」の際に重要なこととはどのようなことでしょうか。ただ調べるだけでは今までの調査と変わりがありません。以下の3つのポイントをベースに、“生活者視点”でブランドのコンディションを把握することが重要です
データ分析は実施することが目的ではなく、何らかの課題に対して解決策を検討するための手段です。抱えている課題によって、分析手法も分析対象者も大きく異なります。そのため、事前に課題を抽出し、仮説を設計したうえで、例えば「このターゲットに対して〇%の認知を獲得できると〇〇円の売り上げが見込める」と“打ち手”を絞り、クイックに実行に移していく必要があります。また、単純に自社ブランドユーザーに使用感やイメージ調査をするだけでは、設問や回答者に偏りが出てしまうため不充分なのです。
“打ち手”のピントをさらに合わせるためには、市場や生活者視点でのインサイトを深掘りすることも重要です。例えば、該当の商品やサービスを使用した生の声や、実際の生活者の使用シーン等を深掘りすることで、さらなる商品やサービスのヒントを抽出します。今よりももっと、生活者に「私のための商品(サービス)だ」と思ってもらえることに成功すると、ブランドへの信頼が構築され、LTV(=ライフタイムバリュー)の向上につながります。
市場や生活者のニーズは刻一刻と変化しています。特に近年は、新たなテクノロジーの台頭や、個人が低価格で簡単にネットショップを開設できる等、新規参入ができる環境も整っています。昨年までは正しいと思っていた“打ち手”が、今年は通用しなくなることも充分にありえます。だからこそ、定期的にコンディションを測ることが重要なのです。
自身の体調に何か異変を感じたときを想像してみてください。症状を伝えるだけで「手術しましょう」と言われるとドクターに不信感を抱くことになると思います。しっかりとした問診・触診・検査を通して、ドクターと治療計画を立ててから、手術や投薬という解決策を選択するはずです。
大切に育ててきたブランドも同じです。必ず生活者視点で定期的にコンディションを分析したうえで、確実性の高い解決策をたてて、ブランドの健康状態を維持していきましょう。
コロナウイルスの影響や急速な技術革新により、世の中の不確実性はどんどん高まりつつあります。そのような時代だからこそ、ブランドと生活者の関係性を常にデータで把握しておくことはデジタルの発展により当たり前になりつつあります。
前述したワークマンがデータ経営を推進している理由の一つも、「不確実な時代には現場に情報がある」という“生活者に一番近い現場視点”での判断を重要視しているからです。事実ワークマンは数値的な「データの力」だけでなく、「生活者の声」を、新たなプロダクト開発や新たな出店計画に反映させています。
そのような、生活者の変化を敏感に感じ取り、常に変化に対応できる体質づくりが、長期的なブランドの成長や拡張に求められるのではないでしょうか。
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