COLUMN

コラム

, , 2020/07/17

#withコロナ時代のパラダイムシフト DXとSDGs

 

企業のSDGsへの関心が高まったコロナ前

 

東銀座のYRK& TOKYO3階に事務局を置く一般社団法人ソーシャルプロダクツ普及推進協会。今年で設立9年目を迎えました。
ソーシャルプロダクツとは、「人や地球にやさしい商品・サービスの総称で、生活者がよりよい社会づくりへの参加(社会貢献)が可能なもの」を指します。
ソーシャルプロダクツの普及推進については、まだまだ道半ばですが、SDGsやESGへの企業の関心の高まりが、ソーシャルプロダクツの普及を後押ししてくれています。そういうこともあり、昨年は企業からのセミナーや研修の依頼が増えました。

当協会に寄せられる悩みの多くは、「SDGsへの取り組みは、どこから始めたらいいかわからない」「SDGsを全社的な取り組みにしたい」「SDGsを事業として収益化できないか」というものです。そういう悩みに対しては、メーカーであれば、「ソーシャルプロダクツを作ってください」、小売業であれば「ソーシャルプロダクツを販売してください」と提案してきました。

なぜなら、商品を作る、商品を販売するということは、企業のバリューチェーンそのものです。必然的に全社横断的な取り組みになり、収益を上げることが目標になるからです。

SDGsを文脈としたソーシャルプロダクツへの関心は、第7回目となる「ソーシャルプロダクツ・アワード2020の盛り上がりにつながりました。誰もが知っているナショナルブランドが複数エントリーしてくださり、また大丸松坂屋百貨店様の協力により、アワード受賞商品の展示販売会も行われ注目を集めました。
ところが、SDGsを起点としたソーシャルプロダクツへの関心に水を差したのがコロナショックです。

 

 

コロナショックがもたらす2つのパラダイムシフト

 

大丸東京店でのソーシャルプロダクツ・アワード展示販売会は、感染対策に万全を期して3月に開催されましたが、アワード表彰イベントは中止にせざるを得ませんでした。

そして3月から4月にかけては、新型コロナウィルスによって、企業も人も命が脅かされる状態に陥りました。マズローの欲求5段階で言えば、生命や安全の欲求さえ満たされない状態だとも言え、「自分や家族のことで精一杯、環境や社会問題どころではない」という声も聞かれました。

しかし、今世界中で起こっていることを、冷静に見渡してみれば、デジタルシフトとソーシャルシフトによる大きなパラダイムシフトだということに気づかされます。

 

デジタルシフトについては、すでにずいぶん語られています。その本質は「減省無」です。今まで必要だと思われていた「時間」「場」「プロセス」を、「減らす」「省く」「無くす」ということです。やり方によっては今までかかっていた時間とコストが消滅します。

 

一方ソーシャルシフトは、今まで見せる必要がなかったこと、やる必要がなかったことを、見せないと信用されない状態になったということです。

例えば消毒の頻度や方法から、製造や流通の経路など、きちんと知らせる必要が出てきたのです。密にならないように距離を取るソーシャルディスタンスも同じで、飲食店では満席や相席ができなくなりました。

 

これらはすべて新たに発生するコストです。しかも丁寧にきちんとやればやるほどコストがかかるのです。

 

2つのシフトをいかに実現するか

デジタルシフトは、0か100。「時間」「距離」「大きさ」「場所」「手間」「価格」など今まで数字で表されていたことを「減省無」することで実現できます。デジタルシフトができたところと、できなかったところの差は圧倒的なものになるでしょう。ソーシャルシフトも今までの商売の常識を覆すものですが、転換できるかどうかが、差につながります。

それは、

「見える化」から「魅せる化」

「ニーズ・ウォンツ」から「意味・価値」

「売り手と買い手の関係」から「仲間・同志の関係」

という3つによって実現できます。

 

●「見える化」から「魅せる化」

単なる見える化では通用しません。ソーシャルシフトは、今まで見せる必要がなかったものを見せないと信用されないということです。

つまり、どの企業も同じようにやりはじめます。だから、魅力的に見せる、物語のように共感を呼ぶように伝えないと価値にならないのです。

 

たとえば、第7回ソーシャルプロダクツ・アワード(以下SPA)で優秀賞を受賞したカゴメ「野菜生活100季節限定シリーズ」。

「地産全消」をコンセプトに、生産者の顔が見える仕組みづくりにも注力し、「笑顔をつなぐプロジェクト」と名付け、生産者とお客様が日本地図上でつながるスペシャルサイトを公開中。サイト上では、生産地の様子や栽培へのこだわり、農家さんからのメッセージなどを閲覧できます。

 

加工食品や飲料であっても、誰がどんな思いで作ったものかを明らかにすることで、受け手側は信用を越えて共感になり、さらには応援したいという気持ちになります。

 

●「ニーズ・ウォンツ」から「意味・価値」

これまでのマーケティングで重要なことは、生活者のニーズやウォンツを探ることでした。何を必要としているのか、何が欲しいのか。市場調査の要諦は、声なき声を探索するリサーチ技術と言っても過言ではありませんでした。

このコロナ禍において、トイレットペーパー不足が起きたりマスクを買うために長蛇の列ができたりと、一部のモノ不足はありましたが、そんな状態の中でも、ほとんどのモノは手に入りました。そして不足したモノもすぐに正常化しました。

つまり、いつでもなんでも手に入る時代。欲しいモノなんかない、必要なモノは揃っている。しかもどれを選んでも、スペックも機能も品質も、必要なレベルを超えています。だから悩んだり迷ったりする必要がなくなったのです。

では何が購入の動機になるかと言えば、それを持つことに「意味があるか、価値があるか」ということです。

 

例えば、今回SPAの年度テーマ(プラごみの削減につながる商品・サービス)で大賞を受賞したニチバン「セロテープ®」。

原料のほとんどが植物由来の天然成分。透明フィルムは、木材パルプが原料のセロハン。粘着剤は主に天然ゴムと天然樹脂を使用し、巻心も再生紙を採用しています。

一方プラスチック系のOPPテープと呼ばれる透明テープ。見た目はほとんど同じで、価格はOPPテープのほうが安く、性能はセロテープのほうが良い。今まで透明テープをよく使う専門店や百貨店では、価格差があっても性能差が重視され、セロテープが支持されてきたそうです。

しかしSDGs時代では、生活者にとってもセロテープを使うことに新しい意味や価値が生まれます。

それはセロテープの原材料によって付加されたソーシャルな文脈なのです。

 

また年度テーマで生活者審査員賞を受賞したアサヒビールの「森のタンブラー」も同じです。

森のタンブラーが、生活者審査員から大きな評価を得たのは、間伐材やビールの焙煎後に廃棄される大麦などが活用された「高濃度セルロースファイバー樹脂」を材料に作られているからです。

同樹脂は、使い捨てプラスチックカップを削減するためにアサヒビールがパナソニックと共同開発した独自技術です。

この森のタンブラーも、まさにニーズやウォンツではなく、ソーシャルな意味や価値によって選ばれています。

 

 

 

 

●「売り手と買い手の関係」から「仲間・同志の関係」へ

これまでの「作る側・売る側」と「買う側」という関係は、言いかえれば「テーブルに向かい合う」関係でした。

お客様になっていただくために情報を提供し、その情報の中で商品を選んでもらうという関係です。

ネットが発達し、生活者自身が誰でも情報発信できる時代。今では情報は生活者の方が豊富に持っています。一人の情報は少なく薄いものかもしれませんが、一人一人を束ねていく、対話をしていくことによって、豊富で深い情報になっていきます。

 

このような時代では、顧客との関係を、「仲間」「パートナー」「チーム」「コミュニティ」に変えることが求められます。

企業や商品が生活者と同じ側に座って対話をする「カウンターに座る」関係です。これは、価値を提供する側と受け取る側の関係から、価値を共に創造する(共創)関係へのシフトです。

 

例えば、前述のアサヒビール「森のタンブラー」は、ボーイスカウト日本連盟とのコラボレーションによって、新しいデザインや商品企画アイデアを日本中のボーイスカウトから募るコンテストを実施しています。

まさに作り手と買い手から、作り手の仲間・チームとして、子供たちと一緒にプラスチックごみを減らし森と海を元気する社会を目指し、新しい商品を生み出す取り組みを行っているのです。

 

 

デジタルシフトとソーシャルシフトで競争ではなく共創を

DX(Digital Transformation)という言葉をよく耳にするようになりました。その意味は「デジタルによって、より良い社会をつくる」ということです。言いかえれば、「デジタルによって、誰一人取り残さない社会をつくる」ということで、これはSDGsの理念(Transforming Our World)そのものなんです。つまり目指すべき本質は同じだと言えます。

コロナによる非常時の世界では、多くの企業がマスクやフェイスシールド、消毒液を作ったり、医療従事者向けのサービスを新しく提供したり、営業できない外食店はデリバリーに切り替えたりと、様々な活動を始めています。動機も、何か手助けできないか、やむにやまれず、時間と原料が余っているので、など様々です。

これら一つ一つは、平時であれば「異業種参入」「市場開発」「業態転換」などと呼ばれ慎重に行われる活動ですが、この非常時には世界中で一斉にハイスピードで起こっているのです。これは大きなイノベーションだとも言え、これだけを見ても、社会も市場も劇的に変わるのは必然です。

 

現象面では相反するようで、本質も、目指す先も同じ、DXとSDGs。

自分たちだけで目指すのではなく、得意分野を持った企業同士がパートナーとなって、より良い社会をつくるために、商品やサービスを生み出す転換が、求められています。

 

そして、今年も7月1日からエントリー受付が始まった、第8回ソーシャルプロダクツ・アワードには、多くの商品・サービスにエントリーいただきたいと思います。

 

株式会社 YRK and CMO / 取締役
兼 TOKYO代表
深井 賢一 Fukai Kenichi

株式会社 YRK and CMO / 取締役
兼 TOKYO代表
深井 賢一 Fukai Kenichi

一般社団法人ソーシャルプロダクツ普及推進協会 事務局長
1989年 株式会社 YRK and入社。マーケティングプランナーとして、食品・日用品・医薬品などのマーケティングやプロモーション、流通小売業の業態開発・売場開発に携わる。
現在はソーシャルプロダクツの適正な市場普及や、SDGsの本業化・ブランディング・コミュニケーション活用を企業に導入するためコンサルタントとして活躍。