#コロナがつくる新しいビジネス習慣


ハイスピードで起こるデジタル&ソーシャルシフト

全国で非常事態宣言が解除され、街中は一息ついた感じですが、ビジネスの世界ではすでに新しい習慣への模索が始まっています。治療薬もワクチンもまだ無く、症状には出ていない潜在的な感染者が、顕在感染者の10倍ともそれ以上とも言われている以上、感染予防を目的とした新しいビジネス習慣を受け入れざるを得ません。順応できるか否かは商機に関わる問題です。そして、順応へのキーワードは、デジタルシフトとソーシャルシフトです。

デジタルシフトは、これまで常識だった場・時間・プロセスを一切「省く」方向に向かっています。特に商習慣や生活習慣での「人と人の接触をできるだけ省いて」いきます。一方ソーシャルシフトは、それまで「見せないことが常識だったプロセスや裏側を表に出す方向」に向かいます。産地や物流経路や製造工程などを見せないと、信用されない世の中になるからです。
もう一つは、社会・生活の価値観が大きく変わることです。人と人の距離感や会話を含めたコミュニケーションのあり方など、習慣やマナー・ルールに至る変化です。

ビジネス

ビジネスの固定観念をコロナが打ち破る

働き方の常識は、たったの数か月間で大きく変わりました。特にテレワークが、一気に拡がりました。日本電産の永守会長が、「テレワークは信用していなかったが、それは間違っていた」という主旨の発言を日経新聞やNHKでしたことが、経営者の間で話題になりました。これまでの、商談は相手と会ってこそ、ひざ詰めでとことん交渉できる、というビジネスの常識、いや固定観念を、コロナはいとも簡単に打ち破ったのです。オンラインでも商談ができるということがわかると、数人が揃って電車や車に乗り相手先を訪問し、会議室に両者が集まって商談をするという、今までのやり方に疑問を感じてしまいます。
それは社内会議でもそうです。オンライン会議をしてみると、みんなが会議室にぞろぞろ集まるその時間もスペースももったいないと思えてきます。サイバーエージェントの藤田社長は、5月25日のブログで「9人以上の会議は原則zoomでとお願い」したと明らかにしました。当社でもこの原則をさっそく取り入れました。
また、これまでオンラインセミナーは、リアルセミナーの補完的なものや、アーカイブとして提供されているものがほとんどでしたが、今開催されているオンラインセミナーは、どこも活況です。

当社で実施しているオンラインセミナーも、リアルセミナーよりも数倍多い集客です。リモートで家にこもりきりだから時間の自由がきくという理由はありますが、リアルセミナーのように会場までの往復時間を含めて調整する必要はなく、「ながら」でも参加できるオンラインセミナーは「気軽」です。逆に言えば、「気軽」に退出できるという面もあるわけで、セミナー内容の質がますます問われるでしょう。セミナーを企画する側の私たちは一層チカラをつけていかないといけませんが、一方でこういう時期でも、オンラインセミナーで知的資産を増やす人と、そうでない人の差がつくということでもあります。

チーム力は雑談力!?

ところで、オンライン化は良い面ばかりではありません。オンラインミーティングは、時間を決めて、「せーの!」でサインインしないと、みんなが顔を合わせることができません。「一本電話してから行くから、5分遅れる」とか「あいつなんで遅れてるの?」「あ、トイレに行っているみたいです」というちょっとしたやり取りは、オンラインではできません。サインインするまで視界に誰も入っていないからで、人の気配も空気も感じません。後輩が上司に怒られているのを横目で見て、後で慰めてやろうか、というのもありえません。打合せをしているメンバーが、面白そうな仕事の話をしているな、もありません。何気ないメンバー同士の会話から、趣味や好きなスポーツを知ることもないわけです。
一方ミーティング中に、子供たちやワンちゃんねこちゃんが映り込んで、そこから話が弾んだというオンライン特有のメリットもありますが、総じてなんとなくはじまる雑談ができないのがオンラインなのです。

さらに言えばオンライン上で会う時、ディスプレイに映っているのはみんな真正面の顔です。リアルの場でよくある、誰かと誰かが話している、その後ろや横でなんとなく話の内容が聞こえてきたり、それがきっかけで話の輪に入ったりということは、オンラインではありえません。オンラインによる働き方が増えてくると、雑談力がチーム力を左右することになりそうです。

名刺代わりの背景画面

オンライン商談でよくあるのが、初めての方が参加された場合のことです。名刺交換がないので、商談が終わってみたら結局どこの誰が新しく参加していたのかわからないままだったとか、カメラがオフにされていたので、顔も反応もわからないままだったとか。当然メールアドレスもわからないので、他の参加者にあらためて聞かないとわからないわけです。そこでこんなことをしてみてはどうでしょう。オンラインミーティングで、家の中が映り込まないように背景画を設定する人が増えています。そこで、背景画を名刺にしてしまえばいいのです。バックに社名ロゴ、名前と部署・役職、得意な仕事や趣味なんかを入れてもいいかもしれません。名刺から話題が広がるように、背景画からその人となりがわかり話が盛り上がる、という時代です。

<当社が使っているオンライン用名刺背景>

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デザインでつくるオフィスの習慣とルール

オフィス空間も変わります。そもそもテレワークを推奨した結果、オフィスはガラガラ。高い家賃は、主のいないデスクと空気のために払っている状態です。非常事態宣言が解除されても、感染リスクを考えれば今までのようなオフィスレイアウトや出勤ルールでは、あっという間にチームメンバー全員が密に向かい合って席についている状態になります。このように日本のオフィスのデスク配置は、向かい合う島型が主流でしたが、根本から考え直すきっかけになりそうです。オフィス家具を製造販売する、オカムラ、イトーキなどは、このコロナによってワークプレイス改革が起きると考え、感染予防と新しい働き方を実現するオフィスのあり方やレイアウトを、それぞれのホームページで提案しています。

またシカゴのグローバル不動産総合サービス会社のクッシュマン・アンド・ウェイクフィールドは、「6フィート・オフィス」というプロジェクトをスタートさせました。これはオフィス内での感染予防のために、人と人が6フィート(1.8m)の距離を保つルールを、誘導サインや一方通行時計回りルール、使い捨てデスクシートなどで習慣化しようという試みです。デスクは向かい合わないようにジグザクに配置され、デスク回りの1.8m幅はタイルカーペットの色が変えられていて、心理的に踏み入りにくいようになっています。
最近スーパーのレジで、間隔を空けて足形のステッカーやカラーテープが貼ってあると、無意識のうちにつま先を合わせて立ってしまうということがよくあります。まさに百聞は一見に如かずです。トラックの後部によく貼ってある歌舞伎の隈取の両目のステッカーも同じで、後続のドライバーに人に見られているという意識付けを行い、交通ルールやマナーを自発的に守ってもらおうという狙いがあります。
ルールというと、どうしても箇条書きの文章による「べからず集」になりがちですが、デザインやツールを使えば、スムーズに意識改革と行動変容・習慣化を行うことができるのです。

<当社が取り組んでいるニューノーマルオフィス>

オフィスの常識が非常識化する

またオフィスでのペーパーレス化。これは紙の無駄とかテレワーク化の障害になるという問題だけなく、多くの人が出力のためにべたべた触る複合機を、できるだけ使わないようにするという意味も付加されました。ドアも自動ドアの方が触らなくてすみます。スマホが普及した今、みんなが触り受話器でしゃべることで飛沫感染源になるとも言えるオフィスの電話は不要になるでしょう。そしてオフィス内やその周辺に外部の人を入れないようにすることは、セキュリティ面だけでなく、不特定多数の感染源の侵入を防ぐということにもつながります。

一方商談は、オンライン化が進んでも、お会いしての対面は無くならないでしょう。しかし、お招きする以上は新しい準備が必要になります。例えば受付で、面会者を呼び出すために使う内線電話機。いろいろな人が口を近づける受話器は抵抗があります。来客者の携帯電話から直接面会者を呼び出してもらう方法に変えたほうがお客様は安心です。
商談に使うテーブルには、飛沫防止パーテーションの設置が必須になるかもしれません。それがお客様に与える安心のおもてなしになり、逆にこれまでのおもてなしの代表であった、湯呑に入ったお茶は敬遠され、かえって紙コップの方が衛生的に感じられるかもしれません。

新しい生活様式をビジネスに活かそう

コンビニエンスストアやスーパーのレジで見られる感染予防のためのナイロンシート。
今は応急的ですが、時間が経てばデザインと機能性に優れたものに変わってくるでしょう。百貨店や役所の案内係など、フェイスシールドをしている人を見かけるようになりました。目からの感染を防ぐためのものですが、これも今後デザイン性のある素敵な、かっこいい、またはおしゃれでかわいいフェイスシールドが出てくるはずです。すでにNYのデザイナーが、サングラスと一体化したフェイスシールドをつくり、「おしゃれだ」と話題になっています。

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© Joe Doucet

女性が日焼け防止に使っているUVサンバイザーの延長線上か、サングラスの延長線上か、最近ファッションアイテムになりつつあるマスクの延長線上なのか、いずれにしてもフェイスシールドも新しいおしゃれアイテムになるかもしれません。
ここまで見てきたように、新しい生活様式はすでに始まっています。そして今はコロナ感染対策という名目ですが、いずれ習慣化し常識化するはずです。そしてこの変化はすべてビジネスチャンスだと言えるのです。新しい生活様式を、明るく前向きに、そしてビジネスにしながら、取り入れていきたいと思います。

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株式会社 YRK and CMO / 取締役
兼 TOKYO代表
深井 賢一 Fukai Kenichi
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株式会社 YRK and CMO / 取締役
兼 TOKYO代表
深井 賢一 Fukai Kenichi

一般社団法人ソーシャルプロダクツ普及推進協会 事務局長
1989年 株式会社 YRK and入社。マーケティングプランナーとして、食品・日用品・医薬品などのマーケティングやプロモーション、流通小売業の業態開発・売場開発に携わる。
現在はソーシャルプロダクツの適正な市場普及や、SDGsの本業化・ブランディング・コミュニケーション活用を企業に導入するためコンサルタントとして活躍。