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Z世代から強く支持されている中国のファストファッションブランド「SHEIN(シーイン)」。世界150カ国で展開しており、売上は2兆~3兆円と言われています。日本でもZ世代から熱く支持されており、世界で展開する有名アパレルブランドを超える勢いで成長しています。

ECを中心に展開するDtoCブランドですが、最近は東京・大阪に実店舗がオープンするなど、話題になったことも耳新しいかと思います。

今回は、そんなZ世代から支持されているSHEINについて、同じくZ世代である筆者がリアルな言葉で紐解いていきたいと思います。

Index

  1. SHEINは安くて、若者のトレンドを把握しすぎて、“草”
  2. 顧客情報を取得・分析することでトレンドを予測
  3. SNSで発信したくなる、ポップアップストアや実店舗の設計
  4. 時代に負けない強いブランドの資質

まずはコレ。

SHEINは安くて、若者のトレンドを把握しすぎて、“草”

SNSでも超ホットな話題で、InstagramやTwitter、TikTokではインフルエンサーがSHEINの商品を投稿し、YouTubeでは人気ユーチューバーとのタイアップ企画などが多く投稿されています。

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SHEINでは、シャツやスカート、アクセサリーなどは数百円で購入できるものもあり、品揃えも非常に豊富です。Instagramや雑誌で見かける最新のトレンドアイテムだって珍しくありません。

ただ、ここで声を大きくして言いたいのは「ただ安いだけでなく、最新のトレンドアイテムが手軽に購入できる」ということです。多くのアパレルブランドがコストと時間をかけてトレンドの商品を展開しているにも関わらず、なぜSHEINは低価格帯で、常にトレンドのアイテムを販売できるのでしょうか。

その背景には、SHEINのデジタルマーケティングが強く関係しています。

顧客情報を取得・分析することでトレンドを予測

SHEINで買い物をするには、公式アプリやECサイトから購入するしか方法はありません。実店舗でも商品の試着のみで、商品の購入はできない徹底っぷりです。そうすることで、徹底した顧客情報管理が可能となり商品の購買履歴、閲覧履歴、購買行動などが全てデータとして蓄積されます。さらにターゲットがSNS上で発信した情報を掛け合わせることで、AI(人工知能)によってターゲットの好み、傾向を把握して次に来るであろうトレンドを予測し、商品開発の参考にしています。

こうした顧客とのダイレクトな接点を持つことは、商品の売上に影響するだけでなく、顧客のロイヤリティの向上にも寄与します。ECサイトや、アプリの提供により、顧客とのダイレクトなコミュニケーションを図ることで、顧客とブランドとのつながりをどんどん深めていくのです。例えば、ECサイト上でカートに商品が残っている顧客には、個別の割引クーポンを送信するなど、顧客に合わせたサービス提供を行うことで、顧客ロイヤルティを向上させます。

また、返品や交換についても、顧客に対して柔軟に対応することで、顧客満足度の高さを実現させています。

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SNSで発信したくなる、ポップアップストアや実店舗の設計

顧客のリアルな声を収集するにはSNSの活用も欠かせません。SHEINはZ世代が自らSNSに投稿したくなる仕掛け作りが非常に上手です。

例えば、実店舗やポップアップストアに撮影ブースを設置したり、#SHEINをつけて投稿するとアイテムが当たる、ガチャガチャを体験できる「SHEINガチャ」を設置するなど、投稿したくなる仕掛けが施されています。

特に、「SHEINガチャ」では、ネックレスなどのアクセサリーやオンラインショップで利用できるギフトカードなどが当たり、同時にSHEINのショップ袋(ショッパー)がもらえるので、街中にSHEINの紙袋を持つ女子が溢れていました。大阪あるあるかもしれないですが、ショップ袋をサブバッグ代わりに持ち歩く女の子は多く、自然とZ世代の女の子たちがSHEINショップ袋を持ち歩いているところを見かけることになります。

ブランドの認知を目的としたSNSキャンペーンや広告運用を行っている企業も多い中、ターゲットのライフスタイルや趣味・嗜好を把握しているSHEINだからこそできるマーケティング施策だと思います。

時代に負けない強いブランドの資質

SHEINは、従来のファストファッションのような大量生産、大量消費のビジネスモデルで、SDGsやエシカル消費といった時代に逆行している・・・、ブランドとして長続きしないのではないか?と捉えられている方も多いと思います。

しかし、ここで1つ考えていただきたいのが、「単に安い商品を大量に生産して販売している」と「ターゲットが購入できる価格帯で、ニーズに合った商品を販売している」では意味が異なるということです。SHEINのメインターゲットは10代、20代といった若者です。ほとんどが、お小遣いやアルバイトで稼いだお金をやりくりして、ファッションを楽しんでいます。そんなターゲット層が購入できる価格帯で、最新のトレンドアイテムを提供し続けているからこそ若者から支持され、愛されているのではないかと思います。実際に4年連続で黒字を叩き出し、顧客から愛され続けるブランドであることは証明されています。

これらのことから、時代に負けない強いブランドを作るには、時代のトレンドや風潮に沿ったブランド戦略を立てるのではなく、時代の如何にかかわらず、ターゲットのニーズや求める価値を追求し続けていくことが大切であり、このようなブランドだからこそ本当の意味で強いブランドと言えるのかもしれません。

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とはいえ、
やっぱり安価な商品だと耐久性が低く、サスティナビリティ的にどうなの?という意見もやはり多く、ファストファッション界でこの先何十年と生き残り続けるには、サスティナビリティ経営は非常に重要です。

SHEINはサステナビリティ経営に対する取り組みとして、2022年4月にサステナブルでエシカルな新コレクション「evoluSHEIN」を発表​​しました。商品展開として、リサイクルポリエステルなどの地球への影響が少ない素材を使用する方針です。

今後、SHEINが「グリーンウォッシュ」と揶揄されることなく、サステナブル経営に向かうために、どのようなアクションをとっていくのか。今後の動向に目が離せません。

writer
井戸本 眸