#バックキャスティング思考で臨むSDGs


未来の姿を起点に今を考える

最近、「バックキャスティング」というキーワードをよく目にします。バックキャスティングとは、未来の姿を描き、そこを起点に今何をすべきかを考える手法。1997年にスウェーデン環境保護省が「Sustainable Sweden 2021(2021年の持続可能性目標)」レポートをまとめる際に使用したことで知られるようになりました*。反対に、過去や現在の状況から未来を検討する方法をフォアキャスティングといいます。

延長線での進化だけではなく、大きな変化やイノベーションを生み出すためには、バックキャスティング思考が有効に働きます。以下の例をみても、フォアキャスティングでは現状を見据えた実現可能性の範囲内での改善策は出てきますが、抜本的なアイデアは生まれづらいことが想像できます。

フォアキャスティング バックキャスティング
売上目標 5年後120% 5年後400%
ある家電商品の軽量化 1gでも軽く 2分の1の重量に

もっと身近な例では、「一軒家をいつまでに買いたい!」「老後は海外で生活したい!」という夢がある場合、その未来の姿を起点に、今何をすべきかを考えることは自然なことです。これもバックキャスティング思考ですね。

この思考法、特に最近はSDGsに関するキーワードとして注目されています。SDGsとは、「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の略称で、2015年9月の国連サミットで採択された、国連加盟193ヵ国が2016年~2030年の15年間で達成するために掲げた目標です。環境・経済・社会など幅広いテーマを網羅しており、17の目標が設定されています。

SDGs 世界を変えるための17の目標

正式名称は、「我々の世界を変革する(Transforming our world):持続可能な開発のための2030アジェンダ」。ここで、changeではなく、transform という言葉が使われていることに注目します。映画「トランスフォーマー」の変形ぶりを想像してください。この言葉は、単なる”変化”ではなく、劇的でドラスチックな変化=「変革」を表しています。地球が直面している経済、社会、環境等の様々な課題に対処するため、みんなで力を合わせて我々の世界を変革しよう!それがSDGs。「変革」だからこそ、今までの延長線上で考えるのではなく、バックキャスティングが不可欠なのです。

道筋が見えなくても、目標を掲げることから始める

SDGsに向き合った企業は、「SDGsが大事なのはわかるけど、うちの会社に何ができるか…しっかり考えないと動けない」「自社の現状から考えるとそんな大それたことはできない」などと、”できない理由”をあげてしまいがちです。先日ある講演でSDGs先進企業の担当者がおっしゃっていました。「日本企業はまじめすぎ。道筋がみえなくてもいいんです。まずは目標を掲げることが大事だ」と。

実際、具体的な目標を宣言する企業も目立つようになってきました。実現への道筋はまだ見えていないかもしれませんが、この目標を掲げることで、現状を調べ、打開策を考え、行動していくという動きにつながります。

例)・2025年までにプラスチック製レジ袋の使用量をゼロに
  ・2050年までに使用する電力を自然エネルギー100%に

SDGsを企業の戦略の真ん中に据え、企業と世界の未来の姿を描きましょう。そして、その未来を起点に今何をすべきか考えてみませんか?変化の激しい世界です。考えることも大事ですが、まずは動きはじめることが求められています。

*参考:国土交通省「2030 年の日本のあり方を検討するシナリオ作成に関する調査概要

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株式会社 YRK and
SDGsコンサルティング事業部 シニアマネジャー
木村 有香 Kimura Yuka
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株式会社 YRK and
SDGsコンサルティング事業部 シニアマネジャー
木村 有香 Kimura Yuka

YRK&の前身であるヤラカス舘にマーケティング職として入社。2011年社内の新規事業構築プロジェクトを推進し、「持続可能な生活(社会)の構築をITとマーケティングを通してサポートする」ことをビジョンに、人や地球にやさしい商品・サービスであるソーシャルプロダクツ専門のショッピング・情報サイト「SoooooS.(スース)」の立上げに参画。現在は、企業のSDGs本業化を通じ、生活者・企業の力で社会的課題を解決・緩和する世界の実現を目指す。