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近年、企業やサービスの差別優位性や価値を高めるため、「ブランディング」に取り組む企業が増えてきています。大きな理由の一つとして挙げられるのは、原材料費高騰による販売価格の値上げです。

値上げをすると価格優位性が下がるので、別の所で勝負せざるを得ない。そのためには、機能的価値だけでなく情緒的価値を高めて勝負しなければなりません。すなわちブランド価値を高めることが必要になってくるのです

その点、イタリアのカーメーカー「フェラーリ」は、優れたブランド戦略を創業時から展開。強気な価格戦略を継続し、原材料費高騰を吸収できる利益設計で増収増益を繰り返しています。直近ではフェラーリ初のSUVとなる「プロサングエ」がデビューするも、既に2年分の受注台数が即完売し、現在は受注が止まるほど人気のようです。今回は、そんなラグジュアリースーパーカーブランドであるフェラーリ社の歴史的背景を踏まえながら、「強気なブランド戦略」について考察してみます。

Index

前編

  1. 2つの顔を持つ「フェラーリ」
  2. 後編

  3. 「欲しがる客の数よりも1台少なく作る」というビジネス哲学の起源
  4. ストーリー性の高いプロダクトはブランドポテンシャルも高い

2つの顔を持つ「フェラーリ」

2022年に創業75年になる老舗企業のフェラーリ。2020年には英国 Brand Finance Global 500 で「世界最強ブランド」の座を獲得し、「決して広告は打たない」「欲しがる客の数よりも1台少なく作る」というフェラーリ独自のビジネス哲学が有名です。

創業者エンツォ・フェラーリが「レースで勝つ」という情熱と夢を託し、今も尚その情熱をブランドストーリーに刻み続けています。フェラーリ社は数多くのスーパーカーを生み出すカーメーカーの顔と、F1世界選手権創設時から参戦を続けるF1コンストラクター(レースチーム)としての顔の、2つの側面を持ちます。(2023年のF1世界選手権ではコンストラクターズランキング3位となり、次年に期待がかかります。)

ブランディングコラム_フェラーリ_前編_コラムimage01(リブランドならYRK&)(BtoBブランディング)
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企業活動としてのサステナビリティを考慮すると、前者のカーメーカー事業が主力に見えますが、フェラーリブランドの存在価値は間違いなく後者です。自動車を大量生産し、利益を得る事を主目的として創業した会社ではなく、“F1で勝つためのチーム運営と、どのチームよりも速いF1マシンの開発”がフェラーリブランドの最大の存在意義なのです。

F1で勝つためには莫大な資金が必要になるため、スーパーカーの販売利益でその資金を調達しています。
フェラーリ社のカーメーカー事業は、F1マシンを開発し1位を獲るために活動している副産物と言っても過言ではないわけです
。(図参照)

ブランディングコラム_フェラーリ_図説1(リブランドならYRK&)(BtoBブランディング)

ブランディングコラム_フェラーリimageSP(リブランドならYRK&)(BtoBブランディング)

そうなると、カーメーカー事業には経営資源を割けません。小ロット生産で高利益な車を効率よく販売することが求められるため、クルマを売るための広告宣伝やプロモーション、営業マン等に資源を配分する余裕などないわけです。

「欲しがる客の数よりも1台少なく作る」というビジネス哲学の起源

できるだけ手間を掛けず、高利益な車を売るには、顧客から「高くても買いたい」とお願いされる状態が理想です。
これなら商品を魅力的に訴求する広告も、高い理由を説明する営業マンも必要ありません。

この状態を作るため、フェラーリ社がとった戦略は大きく2つありました。

次回、コラム後編では、このフェラーリ社の優れた「強気のブランド戦略」を研究、考察していきます。

writer
越野 浩平

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