ブランディングを起点とすると「PR」の本質が見えてくる(リブランドならYRK&)(BtoBブランディング)


Index

  1. そもそもPRとは?
  2. 世界のPRと日本のPRの違い
  3. なぜブランディング起点のPRが必要なのか
  4. 最後に

突然ですが皆様、普段 PRという言葉をどういう意味で使っていますか?

マーケティングを構成する要素の一つに含まれる PRですが、おそらく人によって使い方は様々で、そもそも何を意味する言葉なのか、その定義が曖昧だったり、間違った解釈をしている方も少なくありません。

今回のコラムでは前職でPR会社に勤めていた私が、PRという概念が生まれた経緯や日本に伝わった歴史なども踏まえ、PRの本質的な意味を紐解いていきたいと思います。

ビジネスの世界でもよく使われる言葉であるからこそ、本質的な意味を知り、理解を深めるとともに、PRの本質から見えるブランディングの在り方を考察してまいります。

そもそも PRとは?

PRってプロモーションって意味でしょ?PRって広告ですよね?

以前、PR会社に勤めていた時、このような言葉を頻繁に耳にしました…。確かに、よくある「PR」という言葉の使われ方は、何かを宣伝するときや売り込むときに使われがちなので、仕方がない気はします。

PRとは、パブリックリレーションズ(Public Relations)の略語で、組織とその組織を取り巻くステークホルダー(消費者・取引先・従業員・メディア・株主・行政機関…など)との関係を良好なカタチに導く考え方であり、行動のあり方で、簡単に言ってしまえば、世の中と素晴らしい関係を築いていくためのコミュニケーション戦略の一つです。

ブランディングを起点とすると、「PR」の本質が見えてくる_image01(リブランドならYRK&)(BtoBブランディング)

そもそも PRは、1775 年に始まったアメリカの独立戦争が起源とされています。かつてイギリスの植民地であったアメリカが独立するためには、民衆と想いを共有し、共に行動を起こすことが必要であり、世の中との関係構築を実現しなければならなかったのです。ここから、PRという概念が生まれました。元々政治的な要素が強かった PRですが、歴史を重ねていくうちに、マーケティングの一部となったのです。

世界のPRと日本のPRの違い

2-1 世界のPRの捉え方

こうした時代背景からアメリカは、いち早く PRをビジネスにうまく取り入れ、経済発展を実現させた国の一つです。マーケティングの世界で広告代理店が主に最前線に立っている日本に対し、アメリカでは PR会社が最前線に立っています。世界的にファンが多いブランドや世界的企業を数多く輩出しているアメリカではPRという戦略が非常に重要視されているのです。

歴史的背景(民衆との関係を構築し良好な関係を築いた)からアメリカは、消費者に行動を起こしてもらうためには、どのように戦略的に物事を伝えられるのかをコミュニケーションの常識と考え、日々情報を発信しています。

その「考え方・行動のあり方」こそが、PRであり、アメリカの企業が世界に物事を発信するのが上手い理由の一つなのかもしれません。

2-2 日本のPRの捉え方

日本ではまだまだPRに対する理解度が進んでいないのが現状です。また、その影響からPRを生業としている業界の中でも、それぞれの会社で捉え方が違うことも多々あります。

そもそも日本にPRが伝わったのは、第二次世界大戦後と言われ、GHQ が国民統治の方法の一つとして導入したそうです。

しかし、PRの本質的な意味がよく分からなかった当時の行政機関は、日本語で「広く一般に知らせること」という意味を持つ「広報課」を設置したと言われています。(当時の日本では、部署名には日本語しか使用できなかったのも影響したそうですが…)その後、PRは宣伝(対象となるモノの特長などを一般大衆に知ってもらおうとする活動)とほとんど同じ意味で使用され、パブリックリレーションズ本来の意味から次第に離れてしまい、異なる概念がうえつけられてきたのです。

そのような日本の PRですが、マーケティングの世界でもう一つ違う意味で使われるケースがあります。

PR=パブリシティという考え方です。(パブリシティとはPR手法の一つで、メディアに対する情報提供を介した、公衆への情報発信手法)

ブランディングを起点とすると、「PR」の本質が見えてくる_image02(リブランドならYRK&)(BtoBブランディング)

戦後まもなく高度成長期を迎えた日本では、一般家庭にTV が広く普及したことで、企業の宣伝活動が活発に行われました。当時、人々が情報を入手できるモノとしてはマスメディアがメインだったので、広告とはまた別のパブリシティ活動にも注目が集まり、「PR=パブリシティ」という認識が業界内で浸透してしまったという訳です。日本において、この歴史こそが「PR」という活動内容が大きく誤解されることになった要因だったのです。

このような背景から、PRという言葉一つでも人によって様々な捉え方があるので(PR=パブリックリレーションズ、PR=宣伝 PR=パブリシティ)、まず社内外で共通認識を作ることが大切です。

なぜブランディング起点のPRが必要なのか

3-1 パブリシティの限界

日本のマーケティングの世界では、PR=パブリシティという認識が浸透していますが、事業を推進していくために必要不可欠なマーケティング手法の一つです。ただ、ここで間違ってはいけないのは、メディア露出に至るまでの戦略設計です。はっきり言って、なにがなんでもマスメディアに露出させることだけを目的とした PR活動を行うことには全く意味がありません。ひと昔前までは、マスメディア(特にTV)に露出することができれば、多くの人に情報をリーチすることができ、認知拡大・売上増加が見込まれていたのかもしれません。しかし現代では一時的な効果は見込めても、その効果が持続することはありません。

メディアとのリレーション頼みで、半ば強引にパブリシティを獲得することができたとしましょう。その露出(TV・新聞、雑誌)を見た消費者には認知はされます。しかし、情報や物が飽和した現代では、直接消費者の行動に繋がる確率は低く、メディア露出ができれば、おのずと結果がついてくるという考え方はもはや夢物語なのです。

今の話を聞いて、「いやいや、当たり前でしょ?」と思った方も多くいらっしゃると思います。ですが、上記の考え方に陥ってしまっている会社を私はいくつか目にしてきました。なぜ、このような現象が起きてしまうのか…。それは、会社の部署構造(仕組み)が必然的に問題を起こしているからなのです。

有名な話ですが、世界を代表するブランドを生み出している企業は、マーケティング部ないしは同じ機能を持った部署が、全部署を横断的に管理しています。それは、全部署の判断基準・意思決定の基準や目標を統一することで、全ての行動に一貫性を持たせる為です。

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しかし、日本企業の部署構造は、それぞれの部署が独立している状態で、バラバラの判断基準・目標を掲げてしまっているケースが大半を占めています。そのため、PR・広報部が単体で活動してしまい、わかりやすい目標である、メディア露出の量や、広告換算値の獲得に向かってしまう訳です。(上司に提示する成果物として、広告換算は非常にわかりやすい…)

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前職のPR会社に勤めていた際、間違ったKPI(メディア露出量・広告換算値)を設定し、必死に努力をしている担当者を、私は沢山見てきました。これは、PR・広報担当者の問題ではなく、企業そのものの問題でもあるとも言えます。パブリシティはあくまで手段の一つです。しかし、手段を目的にしてしまっては、本末転倒と言えるのではないでしょうか。

3-2 メディア起点ではなく、ブランド起点のPR戦略

では、PR戦略では、実際どのように考えればいいのか。結論から言うと、メディアのみを意識し(取り上げてもらうことが目的)、露出されるための戦略や施策を行うのではなく、消費者と世の中の流れを踏まえて、そのブランドが提供することができる価値を盛り込んだ戦略・施策を行うことが大切なのです。

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つまり、世の中の流れと消費者インサイトをしっかり見抜き、自分たちの価値を明確に表現できるブランドに昇華させ、そのブランドにしかできない施策を行うことができれば、パブリシティは自然と獲得できるのです

ブランド価値構築を怠り、強引に獲得したパブリシティで話題化を狙うのと、ブランド価値に共感が生まれ、消費者の中で話題となり、ソーシャルメディアなどの中でその話題が溢れかえった結果、“今話題のネタ” としてパブリシティを獲得できたのでは、同じパブリシティでも全く意味も効果も違いますよね。

広告換算で高い数値を達成するためのパブリシティ獲得を意識すればするほど、メディア起点の考え方に進んでしまい、何を目指しているのか分からなくなります。それは、ターゲットにどのような行動を起こしてほしいのか、目的(ゴール)を忘れているからです。多くのメディアに取り上げてもらうためにはどうすればいいのか ではなく、世の中の流れや課題、消費者インサイトに対して、ブランドが提供できる価値を形に変えて可視化することから始めるのが、ブランド起点(=ブランディング)の正しいPRなのです。

しかし、このような戦略を考えるには、PR・広報部だけでは無理があります。ブランド全体の戦略と直結するからです。要するに、ブランドに携わる全部署の意思を汲み取り、共通の意識・目標を設定することが、PRの成功へのカギとも言えますが、実際にどうすればいいのか、答えが見つからない方もいらっしゃるのではないでしょうか。

3-3 ブランド起点のPR戦略に必要なPMOの存在

そこで、我々が重要と考えているのは、PMOという存在です。PMOとは、「Project Management Office」の略語で、一般的な役割は、組織内における、プロジェクトマネジメントの支援を横断的に行う部門で、プロジェクトの意思決定を支援するためにあります。

YRK&が「PMO」として、プロジェクト支援をさせていただく機会は多いのですが、そこで我々が重要視しているのは、全部署の “想い” や “ありたい姿” を共有してもらうことです。時には、議論が活発となり、意見が衝突してしまうこともありますが、全員が意見を吐き出すことで、皆が納得できる(腹落ちする)共通の意識・目標が生まれるのです。

ブランドに関わる人たちが、自分たち(ブランド)はなぜ生まれ何のために存在し、何を目指し活動していくのか。ブランドについて徹底的に考えることで、目指すべきビジョンやとるべき行動、更には関係を持つべき重要なステークホルダーも明確になります。

ブランドの本質について考える(ブランディング)ことが、PRを含めコミュニケーション戦略を考えるうえで何より重要なのです。

最後に

話は戻りますが、本来のPRとは、組織とその組織を取り巻くステークホルダーとの関係を良好なカタチに導く考え方であり、行動のあり方です。

そのための戦略を考える最初のステップとして、ブランドについて考えること(=ブランディング)が勝負の分かれ目であり、そしてブランドが目指したいビジョンを明確にし、ビジョンに沿った活動を行っていくことが重要なのです。

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有名な話ですが、Z世代は“自分らしさ”を重要視する傾向が強く、ブランドの品質や性能に加え、コンセプトやストーリーに共感できるのかを確認したうえで、消費行動に移ると言われています。つまり、自分が価値を感じるモノ・共感できるモノ(ブランド)に代価を払うのです。

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今後、消費のメインストリームとなるZ世代に向けた最適なコミュニケーション戦略とは、すべての活動の軸となるブランディングと、本質的なPRを考えていくことなのではないでしょうか。

ただ、広告(デジタル・TV・OOH など)やパブリシティなどで、企業・ブランドの情報を伝えるのではなく、ブランドの根幹を再定義し、本質的な部分(ブランド価値)をしっかり表現していくことが、皆様の企業・ブランドを取り巻くステークホルダーと良好な関係を築いていくための第一歩となるのです。


岡本浩輝_カジュアルショット(リブランドならYRK&)(BtoBブランディング)


株式会社YRK and
ブランドコンサルティングDiv.
岡本 浩輝
Writer

株式会社YRK and
ブランドコンサルティングDiv.
岡本 浩輝

PR会社にて、戦略PRプランナー/メディアプロモーターを経験。地方自治体、大手食品メーカー、国際スポーツイベント、商業施設、外資系ホテルなど様々な事業・業種のコミュニケーション戦略、パブリシティサポートを担当。PRを起点とした戦略設計をはじめ、コンテンツ開発の経験を活かし、メディアとその先にいる生活者視点でのブランド戦略の構築を得意とする。