2020.02.05
最近、「買い物難民」という言葉をあまり耳にしなくなりました。地方だけでなく都市部でも高齢者を中心に買い物困難者は増加し続けているようです。一方で私の家には使えなくなった蛍光灯が数本、何年間も放置されています。水銀が含まれているとかで、「燃えないゴミ」でも「粗大ゴミ」としても廃棄することができないのです。しかたなく押し入れの隅に置かれたままになっています。他にも捨てていいのかわからない、捨て方がわからないという理由で放置されている小さな家電製品がいくつかあります・・・。「廃棄難民」とでも呼べばいいのでしょうか。
シェアリングエコノミーサービスの普及によって、商品を購入せずともいつでも製品価値を享受することが可能になった今、同様の理由で「所有はリスク」という考え方は今後も加速するだろうと思います。
消費者として製品の購入を検討する際、買った後の不安材料が大きな障壁になることもあります。簡単に設定できるの?使いやすいの?など購入直後のことだけでなく、メンテナンスは?故障した時は?使わない時の保管は?使い終わった後は?転売できるの?引き取ってくれるの?私の自治体でも廃棄できるの?またその費用は?… ユーザーにとってのカスタマージャーニーはメーカーが考えるゴールである購入後もずっと長く続いています。
例えば設置、利用、保守点検、修理、転売、廃棄など先のこと(製品から享受する価値が終わるまで)を慎重に考えた末にようやく購入に至ります。
私は長らくアラジンの石油ストーブを愛用しています。アラジンは80年以上の歴史を持つ英国のブランド。これまで数台保有してきましたが、中でも15型と呼ばれる1960年頃のシンプルなモデルを愛用してきました。丸窓から見えるブルーコーナーと呼ばれる青い炎の輪はとても美しく、視覚的にも暖かさを感じます。給油とシーズン毎の清掃、また数年に一度は芯の交換も必要ですが、それも慣れると楽しい作業です。一度、芯が固着したため修理が必要になった際に出会った修理屋さんに教わったのですが、販売を開始した当初代理店だったのが㈱ヤナセ(梁瀬)。当時は舶来品と呼ばれていた高価な輸入品を購入する際に消費者の不安材料となる故障時の修理やメンテナンスなどの問題を払拭するため全国に販売代理店を契約し、修理やメンテの技術と専用の道具を提供していたそうです。今もその修理技術を持った方が全国にいらっしゃるようです。
一方、ECを使うようになって、いろいろなものが買い易くなりましたが、購入後のサポートやサービスについては逆に受け辛くなったように思います。
「つくる責任、使う責任(SDGs12)」を問われる中、消費者は購入の簡便さだけでなく、長く使い続けることや使い終わった後のことについても考えています。商品を購入した瞬間から始まるユーザーとの関係を健全に保つこと、転売や廃棄まで続く長いカスタマージャーニーの終わりを見届けることは、どのようなメーカーであっても重要な課題になると思います。
販売店や特約店のような組織やインフラの再構築は難しいかもしれませんが、流通小売店におけるサービスの在り方と同様にメーカーのカスタマーサポートの役割が見直されるのではないでしょうか。
YRK&は単なるサポートではなく顧客を成功体験に導くカスタマーサクセスセンターの運営を目指しています。