事業の安定と成長の要は「徹底した顧客志向」。〜食と住まいのお困り事を追求し、持続可能な企業スタンスを貫く「東洋アルミエコープロダクツ」〜リブランドならYRK&)


&magazine image01_東洋アルミエコープロダクツ(リブランドならYRK&)

1969年設立の東洋アルミエコープロダクツ。「気がつけば暮らしのそばに」を企業理念として「サンホイル」ブランドのアルミホイルを代表とした常に愛される製品を生み出しておられる日用雑貨メーカーです。

「お客様の声」を徹底的に聞き入れプロダクトへ反映することで、キッチン周りの油汚れ防止シートやアウトドア容器をはじめとするアルミ製品を日本の食文化に定着させてきました。

また、地球規模の環境問題に対しては、循環可能なアルミニウムや紙素材を使用した食品容器の開発・販売を行い、サステナビリティ経営にも力を入れておられます。

今回は代表取締役社長の山口正起氏が行われてきたマーケティング戦略の成功体験をお聞きするだけでなく、消費財メーカーとしての東洋アルミのSDGsへの向き合い方についてお話を伺いました。

「東洋アルミエコープロダクツ」の今

[中許] 本日は、東洋アルミエコープロダクツの事業成長の秘訣や山口社長の経営ビジョンなど、様々な角度からお話を伺いできることをとても楽しみにしていました。何卒、よろしくお願い致します。

[山口] こちらこそ、どうぞよろしくお願いいたします。

[中許] 社名に「アルミ」とついていますが、近年の御社ラインナップにはアルミ以外のアイテムがとても多く、環境対策、サステナビリティ経営に注力されていることが伺えますが、その辺りも深堀りさせて頂ければと思います。まずは、今の事業内容はどのようになっておられるのですか?まずは、今の事業内容を教えてください。

[山口] 東洋アルミニウムというBtoB企業の1事業部門になります。我々の部門というのは日用品というBtoC商材が多いことが、他の事業とは異なる特徴となっていますね。その中でも大きく分けると、いわゆる東洋アルミのブランドを持った日用品が約6割。残り4割は、いわゆる食品包装容器です。歴史的なものでいうと「鍋焼きうどん」の鍋とか、はじまりはアルミ製品が多いんですけど、最近はアルミだけではなくて紙素材が多くなってきていますね。コンビニで販売するグラタンの容器とか冷凍食品でパスタやグラタンの容器…、そういうところで二つの事業をメインでやっています。

&magazine image02_東洋アルミエコープロダクツ_商品ラインナップ(リブランドならYRK&)

[中許] 「サンホイル」、いわゆるアルミホイルのシェアって、国内だと何割くらいあるのですか?

[山口] 「サンホイル」ブランドだけだと、20%くらいで、いわゆるメーカーブランドの中では一番です。アルミホイルは割と激戦なんですよ。コロナ禍では、外食がダメになった代わりに内食は増えた。いわゆる巣ごもり需要です。キッチンで調理すると汚れる。それが我々には良い風向きでした。いわゆる家庭用の台所用品を中心とした商材に関しては、今年は非常に良い成績が出ました。

時代の変化と共に、多彩な拡がりを見せる商品ラインナップ

[中許] 山口社長は、入社されてからはどんな部署で何をされていたのですか? 

&magazine image03_東洋アルミエコープロダクツ_山口正起氏(リブランドならYRK&)

[山口] 最初から今の日用品の部門です。東京で営業していました。東洋アルミホイルプロダクツの家庭用品部門の営業マン。ダイエーさんとか大丸ピーコックさんといったGMSやSM・HCなど、営業を5年やりました。その後、舞鶴の親父が急に亡くなりまして。会社から「お前、関西に帰れ」ってことで大阪に転勤になったんです。しかも、居場所として、会社がわざわざマーケティングの部署を作ってくれて。当時、課長一人と私の二人でやっていました。

[中許] いわゆる商品開発の部署ですよね? その頃はどういった状況なのですか?

[山口] それはもう、飛ぶ鳥を落とす勢いで、モノを作れば作るだけ売れていく、そんな時代でした。キッチンを見て、アルミでできるものは何だって作ろうと。歴史的な経緯でいうと、最初に売れたのがガスマットなんです。その次が天ぷらガード。これらは今でも残っています。その次がレンジパネル。それを、先々々代くらいの社長が作りました。

&magazine image04_東洋アルミエコープロダクツ_レンジパネル(リブランドならYRK&)

[中許] 入社から5年はその辺を中心に営業されていたと。そこから本社勤務になって商品開発になって、新たなヒット商品を生み出す側になったわけですね?

[山口] そうですね。「物を作る」だけではなく、「誰に何をどう売るか」という、マーケティングの概念が出始めた時です。商品のドメインは主に家庭用と業務用でした。

[中許] 消費者視点に立ったモノづくりの原点ですね。「プロダクトアウト型」の商品開発ではなく、世の中のニーズから商品を開発する「マーケットイン型」の考え方が少しづつ生まれてきた時代ですし、マーケティングの4Pや3C、STP分析を体系的に落とし込み、マーケティング在りきで商品を開発する体制が生まれてきたタイミングですね。
その当時は、どのようなものを生み出したのですが?

[山口] 当時って、台所が大幅に変わった時代なんですよ。ガスコンロが2口になった時代で、さらにそれがシステムキッチンに変わった…。だから、それ向けのものに、天ぷらガード、ガスマット、レンジパネルなど、一気に入れ替えていきました。一番大きかったのは、換気扇です。昔はファンだったものがシステムキッチンになってレンジフードに変わった。そこに力を入れはじめたんです。

[中許] 事業ドメインを変えずに、キッチンの様式に合わせて形状を変えたってことですね。

[山口] 私たちはキッチンを主役って呼んでいるのですが、主役が変化したので我々はそれに追従していったんです。それからあとはリビングです。当時、売り場がどんどん増えていくので、店頭の棚を埋めるためにカラーバリエーションを増やしたりとか。だからこの部署で私が主にやっていたのは、システムキッチンへ対応する物づくりと、カラーのバリエーション展開でした。

お客様の声が集まり、愛用顧客を創る「はがきキャンペーン」

[中許] SKUを増やして棚のシェアを高めたと。その時に心がけたことって何ですか? やっぱり家庭訪問調査とかやっていたんですか?

&magazine image05_東洋アルミエコープロダクツ_アンケートハガキ(リブランドならYRK&)

[山口] そうですね、私が最初にやったことは、いわゆるアンケートハガキ。当時は、ハガキしか手段がなかったんで。あの頃は4マスメディア、特にテレビのGRPをまともに出すには固定費10億くらいかかっていた。10億の経費を広告宣伝にかけられる物品商材って我々の中にはないんですよ。我々が持っているメディアは商品だけ。なので当時100億売り上げていたとすると、単価100円1億個商品が流れている。その中にアンケートハガキを入れるんです。あなたの台所はどうなっていますか?ってね。当時インセンティブをつけていなかったので、リターン率は3%くらいでした。

[中許] 面白いですね、唯一のお客様との接点はハガキだったと。

[山口] そうです、ハガキとあとは売り場しか接点はなかった。その後始まったのがキッチン探検隊です。

[中許] いまで言うホームビジットですね。

[山口] それが2000年頃。これを始めるとお客様情報が蓄積されるんです。そうなるとターゲティングができる。3年に1回はベンチマーク調査として機器の変遷とか料理内容とかマクロの情報を取ると、家庭内の調理環境の変化が見えてきます。あと一番良いのは、ハートマーク(おたのしみマーク)のキャンペーン応募。あれで何を買ったか全部わかるんです。非常にアナログなやり方ですがID-POSのデータ取得レベルで把握できる。そうすると、似たような商材を開発する際、ターゲットが見えてくるんです。そこで、そういう方に家庭訪問インタビュー受けてもらえますか?って依頼したり、逆にグループインタビューに呼んできたり…。

&magazine image06_東洋アルミエコープロダクツ_ハートマークのキャンペーン応募(リブランドならYRK&)

[中許] なるほど。30年以上されている「おたのしみマーク」、(最近デジタルも付け加えましたが)あえて、ずっとアナログでやってきた理由は、お客様の情報をとることが主目的だったと。

[山口] 単なるキャンペーンじゃなくて、「スキーム」なんです。商品というメディアを回しながら、お客様の声を集めて、次のアイデアを作っていくというモデルなんです。

[山口] キャンペーンに応募いただくでしょ?そうすると落ちた方にも「ありがとう」って御礼を出すんです。いわゆるヘビーユーザーじゃなくてロイヤルユーザーをすごく大事にする仕組みができている。それがブランディングにつながっていく。ブランドってそういうものじゃないですか。お客様の声は、月に一回必ずマーケ部が集計して、いいのも悪いのもピックアップするんですよ。フリ―コメントで。それを全社員に掲示板で回覧する。我々がいただける一番の喜びってこういうことじゃないかな…。キレイな話なんですけどね。

[中許] 素晴らしいスキームですね。お客様との接点であるハガキを通じて、メーカーとお客様が対話を続けられている。この「対話」こそが、東洋アルミエコープロダクツのブランドロイヤリティを高めていることに直結しているんだと思います。

新商品のヒットに必要なエッセンスとは?

[中許] 逆に色々ヒット商品だけじゃないと思うのですが…。失敗したケースもあるんですか? 大損した商品とか。

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[山口] 当時、家庭用でやらかした仕事は山ほどあるんだけど、特に失敗したのは92〜93年頃の第一次アウトドアブームの時。以前留学していたこともあり、当時私にはネットワークが結構多くて、世界中からそれっぽいものを探して来て、アウトドア消耗品の「FIELD STAFF」というブランドを立ち上げたんです。東急ストアでエンド組んで特売すると、最初は月商が億単位になった。でも、そのあとすぐにス〜ッて売れなくなって。物づくりがものすごく雑だったんですね。マーケティングにも力を入れなかったし。収支的には損は無かったが、なんか思い出に残ったな、って感じです(笑)。今はブランドも商品も何も残っていない。その事業は3年でなくなりました。

[中許] その撤退のスピード感は良いですね。事業は撤退の方が難しいと言われていますが、事業のストップ&ゴーってどういった判断で決められているのですか?

[山口] 今はグループ経営しているから自然と決まります。例えば2期連続で赤だったら減損しないといけないとかね。だから今はこう自然とブレーキが効きます。でも当時は自分で判断していました。外野も色々と言いますが、はじめたこちら本人としては「俺の趣味だ。ほっとけ、趣味は金がかかる」と言いたい。でもそう言い切れるのも5年が限度ですが…。

[中許] そんな言い訳がまかり通っていたんですか?

[山口] これは先先先代の社長の口癖で、私が引き継いでいるんです。「うるさい、こりゃワシの趣味だ、ほっとけ!」って…。最近僕が、よく言っているんですが、やっぱりこうデータと言うか、行ける確信と言うか、そんな統計学を頼りにする開発はもう辞めようと。それってもう結果が出て、答えが見えてる話を今やってるってことなので。なので私は今、宗教系の学部の人とか、一芸入学の人とか、文系理系にとらわれない思考の方を採用したいと考えています。

[中許] ロジックな左脳よりもエモーショナルな右脳派ですね。データとか数値、合理的なロジカル思考やデザイン思考ではない、アート思考の部類ですね。我々の業界でも、新規事業を創出するため0から1を生み出せる思考を持つ人材や、既成概念に囚われない人材を集めたり、育成する方向に向かっています。自らビジョンを持ち、「問題提起力」「想像力」「実現力」等をスキルセットし、自律型人材が組織にいることで、企業はもっと強くなると思います。

[山口] そういう人材も必要です。全員がそんな人ばかりだと会社が成り立たなくなっちゃうけど。その人にマネジメントを求めるのも違うし。そういう処遇体系を会社は作らないといけない。物を作る作業って、だんだんそうなって来たのかなって思っています。統計学から出てくるのはなんていうか、全然面白くない。結構、小さな事案しかできないんです。だからスキーム全体を変えるような話に発展しない。

[中許] 大々的な事業変革などは、確かに無理でしょうね。

[山口] 今ここにある商品、会社の売上を作っているのは、オンザレールで生まれてきたものばかりです。決められたカテゴリーの中の話をしている。そこからいかに「はみ出せるか」。これが、これからとても重要になってくる。

[中許] 非連続をどう生み出していくか、ですね。

&magazine image08_東洋アルミエコープロダクツ_山口正起氏_YRK&中許将一(リブランドならYRK&)

山口社長の考える「経営スタンス」と2つのミッション

[中許] 山口社長は今後、東洋アルミエコープロダクツをどういう会社にしていきたいとお考えですか?

[山口] 経営者としては、やはりまず潰れない会社にしたい。こう言ったら怒られるかもしれないけど急成長はしなくても良い。私の敬愛する経営者がいつも「定成長」って仰っています。今の世の中っていわゆる指数関数的なことを求められる。だけど僕はそうかな?と疑問があって。我々、東洋アルミグループっていうのは、今3つの大きな事業があります。「アルミニウムの箔」と「パウダー・ペースト」そして「日用品」。我々の事業は「10年間トータルで利益はそこそこだよね」って状況が最適かと思っています。ボラティリティも少ないし。というのも我々1回、ソーラービジネスを経験したんです。約10年前まではパーツ(バックシートとインキ)がシェア世界2位だったんですよ。あっと言う間に500億の売り上げで50億の利益が出た。ところが、あれよあれよと言う間に中国が伸びて来て、すぐにレッドオーシャン。今や事業撤退に近い状態です。これを経験しているから、「定成長」が良いと経営者としては考えています。個人としては面白みに欠けますが…。

[中許] 事業を存続・継続させることを前提とした企業活動が最優先事項という、ゴーイングコンサーンの考え方ですね。この数年で、企業は持続可能な社会をつくる(サスティナビリティ)存在でなければ、ゴーイングコンサーンにもならない。つまり「社会性がなければ市場性もない・存在意義もない」というパーパスブランディングの重要性がとても高まってきました。山口社長が仰る「定成長」も、ここの通づるものがあると思います。

[山口] 企業のMVVPや理念は東洋アルミグループとして確立したものがありますが、僕は「社員が幸せになる」ってことと「世の中の役に立つ」この2つが経営スタンスです。そのためには利益が必要でしょ?という話。

&magazine image09_東洋アルミエコープロダクツ_YRK&中許将一(リブランドならYRK&)

「自社商品の捨て方を顧客へガイドする」ことが企業のSDGsアクションへ

[山口] 家庭用のことばかり話していますが、包材はわかりやすい。来年施行される脱プラスチック新法に対して我々が明確な答えを出さないといけないので。

[中許] なるほど。では、そっち方向にお話を変えて。エコラップやグリーンラップ、商品として環境配慮型商品を出されていますが、環境対策についてどうお考えでしょうか?

[山口] 「考える」というか、もうマストですよね。みなさんと同じですよ、ESGを意識しないと、なかなか世の中に残してもらえないのかなと。今、我々だけじゃなくてグループ全体がそうなっています。中でも特に我々は目につきやすいんで、全部そうしていきますよ。

[中許] そんな中、今回弊社開発の、ごみ分別ナビゲーション「ステカタnavi.」に登録された想いと経緯を、教えてください。

[山口] ひとつは、ネガティブな話かもしれないけど我々の商材っていうのは、基本的に使い捨てなんです。だから悪い言い方すると、ゴミを生産している可能性は否めない。じゃぁ、止めるかっていっても、あまりにも便利だから急には無くならないよねと。その中で少しでも前に進む為には何が良いんだろう?ってなった時、たまたま我々にはアルミホイルがあった。皆さんから、燃えるゴミ?燃えないゴミ?とよく尋ねられている。ところがこれがよくわからない(厳密には自治体によって捨て方がバラバラ)。これを何とか解消できないかなと思っていた時に、今回のお話を頂戴したので、これは我々が先駆けてやるべきじゃないかなという思いになり参加させていただきました。


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[中許] どうやって捨てたらいいか? っていう電話が、御社に月に数件はあるんですよね?

[山口] ありますね。不燃ごみか、燃えるゴミか、各自治体のごみ焼却施設の性能によって違うので。一緒なら良いんですが…。

[中許] あとエコラップも、グリーンラップも同じ文脈ですか?

[山口] そうですね。樹脂も包材として扱います。ただ政府の方針もあるし、世界の趨勢として、私はこれがベストとは思っていません。やっぱり植物由来だけど、パっと見ではわからないんです。ただ、これがベストとは絶対に思っていません。私が言う、事業を継続させるということと天秤にかけた時に、その中のベターを選択することが経営なんじゃないかなと。環境活動家のグレタ・トゥンベリさんも仰っていますが、商品の魅力を値段ではかるって言うのが今後変わっていくんだろうなと。日本では高くて売れない商品でも海外では売れる。その理由が物価指数の問題とかではなく、「買うことによって作ってる人の生活が守られるから」って。そんな答えが出るような、そういう国になって欲しいなって私は本気で思っています。

[中許] 地球環境や人や地域に配慮して持続可能な社会を創り上げるため、倫理的に正しい消費を行う、「エシカル消費」がもっと一般化されていくことを願っています。

[中許] 一時期アパレル業界でも問題視されましたが、コットンやコーヒー、カカオなどの途上国で作られる原材料の生産背景には、労働搾取や環境破壊といった深刻な問題がまだまだ潜んでると言われています。このようなトレーサビリティを明確にすることで「生産者の生活を消費で守る」こと自体がサステナブルな社会を創ることにも繋がります。
国内企業ももっと早くこの点を問題意識化していき、実行に移さないといけませんね。

みらい事業推進ユニットから生まれた新事業とは?

[中許] そろそろ最後になりますが。今回お話を伺っていると、御社はもはやアルミの会社じゃないですよね。山口社長は自分たちのことを何屋だとお考えですか?

[山口] 私の一つの信念に、「世の中の役に立ちたい」がある。つまり、ずっと生活者のお困りごとを解決しようと頑張ってきた会社であるのは確かです。特に食に関わるキッチンエリア。調理に関連するアルミ類から換気扇のフィルターまで様々なお困りごとを解決して、世の中の役に立ち続けたい。そう思ってずっとやってきた。

[中許] 「食に関わるお困りごと解決屋」ですか? 信頼の証のキャラクター「フィルたん」で商品化できる物はいっぱいありますよね。例えば「フィルたん」で掃除機フィルターやマスクとか。

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[山口] ええ。中国の工場でマスクは作っています。日本にはあまり入れてないですけど、東洋のブランドとして中国国内で販売しています。だから「食と住のお困りごと解決屋」かな。ただ私が今、常々考えてることは、今後10年のことを考えると、果たしてこのまま消耗品で良いのか? ということ。

[中許] なるほど、サステナブルな観点ですね。先程ゴミを生産しているとおっしゃいましたが、消耗品ビジネスからの脱却も視野に入れておられる?

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[山口] 消耗品ビジネスにプラスしていく感じですかね。弊社の商品を「あったらいいな」から「なくてはならない」に変えたいんです。それなら消耗品とは限らない。要はインフラ材の方に行きたいんですよ。組織的な話をするとね、通常のラインからは外した形で「みらい事業推進ユニット」という4名の専任チームを作りました。彼らは、言わば映画プロデューサーなんです。どんな作品を作るのか?スポンサーはどうやって調達するのか?監督と役者は誰がベスト? …といった感じでプロジェクトを成功させるために自分達で集めてくればいいじゃないか、と常々言っています。事業になったら事業部長になればいい。今一番面白いのは、「Watergen」。空気中から水を作りだす機械の販売です。開発元はイスラエル企業で、我々がその販売代理店になっています。

[中許] それをみらい事業推進ユニットのメンバーが見つけてきたと?今までの既定路線じゃないぶっ飛んだ案を持ってきましたね。

[山口] そう、自分達でキャッチしてくるんです。「Watergen」という製品。なぜこれかというと、今後、特に地方都市だと、水道インフラの老朽化が進んでインフラがもう保たないんです。そういうところで普及させたい。あと離島のホテルとか、災害時とか。今後は「なくてはならない」インフラ材にどんどん関わって行きたいですね。あと、空気を水にするにはいろんな不純物を取り除かないといけない。そのためにこの製品にはフィルターが欠かせない。こうなってくると、弊社でやるべき事業になってくるしね。

[中許] まさにSDGsですね。持続可能な社会づくりを見据えて、「なくてはならない」インフラを構築しておられるわけだ。

[山口] あと今いちばん興味深い領域は、アルミ廃材と水で水素燃料を作ることです。アルミは水中分解したら「水素」が出るんです。そうなるとアルミは燃料電池自動車の燃料になる。まさに、バックトゥザフューチャーのデロリアンの世界。これからはそんな話になってくるんじゃないかと。

[中許] 御社の社名に囚われることのない、日用雑貨メーカーという枠を超えたスケールの大きい事業変革が今後期待できそうですね。未来を見据えた、ユニークなお話の数々、とても刺激になりました。本日はありがとうございました。

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