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企業の頭を悩ませる「値上げ」。報道では値上げ商品を、家計を脅かすかのように取り上げます。しかし値上げの要因は、社会問題と社会問題の解決コストです。つまり値上げは「社会問題への活動量」だと言いかえられるのです。値上げを共感に変え、付加価値に変えるのがブランド力です。ブランド力を高める重要な価値がサステナブルです。サステナブルは、今やマーケティングそのものであり、ブランディングなのです。そして企業のサステナブルな取り組みは、自社の魅力や価値を社員自身が再発見するきっかけにもなります。

Index

  1. コストは上がり続けるという覚悟
  2. 機能的差別化から感情的差異化へ
  3. それがソーシャルプロダクツ
  4. 企業にとってもソーシャルプロダクツは一般化
  5. ソーシャルプロダクツアワード
  6. 新たな同質化問題を乗り越える

コストは上がり続けるという覚悟

「原材料・燃料費が上がり続けてSDGsどころではない」という声が聞かれます。一方で「SDGsはビジネスに結び付けないと続けられない」という声も聞こえてきます。相次ぐコスト上昇で経営は圧迫され、値上げをすれば顧客離れが懸念されます。以前からこのコラムでも取り上げてきましたが、今のコスト上昇は、ほとんどが社会問題や環境問題が原因です。逆に言えば、社会や環境が劇的に良くならない限り、コストが下がることは無いと覚悟しなければなりません。これからも上がり続けるコストに向き合って、経営的にバランスを取るためには、当然企業努力としてのコストダウンは必要です。

しかし、限界があります。だから価格に反映させる必要があるのです。値上げによって離れていく顧客はいるでしょう。しかし値上げをしても買い続けてくれるファンもいるはずです。そういうファンを多くつくるために必要なことは、「ブランドを強くする」ことです。

機能的差別化から感情的差異化へ

値上げをしても買い続けてくれるファンをつくるにはどうすればいいのか。強いブランドにするためにはなにをすべきか。それは、自社の商品やサービスを機能的差別性ではなく、感情的差異性で選んでもらうことです。

機能的差別化

これまでの商品やサービスは、機能的差別性で選んでもらうというのが主流でした。モノであれば、スペック・性能・効果・効能・成分・価格の比較によって選んでもらうことです。小売業であれば、安さ(価格)・近さ(距離)・便利さ(時間)・大きさ(面積)で選んでもらうこと。これらは、アピールされている数字や、表示されている文字の違いが選ぶ動機になるもので、中には機能や性能を使いこなすことができなかったり、成分や効果を実感できなかったりということもあります。安さや広さのアピールは、ナンバー1以外だと訴求力は極端に低下します。これらは言葉や数字の上での機能競争であり、生活者にとっては実感のない競争だとも言えるのです。

今、上がり続けるコストをどうやって価格に反映させるかが課題にも関わらず、機能付加というコストアップを加えたうえで、コストパフォーマンスという名の価格訴求をしていくというのは、さらに自社の体力を奪ってしまうことになります。

感情的差異化

だからこそ、感情的差異性で商品を選んでくれるファンをつくる必要性があります。ファンというのは、「好きだから」選んでくれる顧客です。「好き」という感情は、比較することなく選んでくれる行動につながり、モノやサービスへの「好き」の原動力は、共感・参加・応援・協力・感動です。他人の感情を思い通りにするのは難しいものですが、「好き」の感情を生み出すメカニズムを理解すれば、ファンをつくることはできます。

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それがソーシャルプロダクツ

そのメカニズムは「ソーシャルプロダクツ」を提供することにあります。ソーシャルプロダクツとは、「人や地球にやさしい商品やサービスの総称」で、オーガニック・フェアトレード・エコ3R・寄付付き・地方活性化・復興支援などが付加価値となった商品やサービスのことです。

と、こう書くと、意識高い系の商品で価格が合わないし、意識高い系の一部の人にしか買ってもらえない特別な商品やサービスのことと思われがちです。しかし、昨年(2021年)12月3日の日経MJヒット商品番付で、西の大関に選ばれたのが「サステナブル商品」でした。「ソーシャルプロダクツ」と「サステナブル商品」、名称は違いますがほとんど同じ定義です。

日経MJヒット商品番付(リブランドならYRK&)

つまり、ヒット商品番付の上位に位置づけられるということは、誰もが手に取る商品になったという意味で、特別な商品やサービスではなくなったということです。

企業にとってもソーシャルプロダクツは一般化

もはやソーシャルプロダクツは生活者にとって特別な商品ではないと書きましたが、企業にとっても同じです。すべての商品やサービスがソーシャル性を持たなければならないからです。なぜなら社会問題がある限りコストは上がり、社会問題を解決するためにはやはりコストがかかるからです。

コロナ禍によってデジタルシフトが進みました。そしてソーシャルシフトも進みました。ソーシャルシフトとは、企業や商品・サービスの社会性が重視されるようになった変化のことを指します。例えば今までやらなくてよかったこと、見せなくてよかったことが、逆にやらないと、見せないと、信用されないようになってきました。

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「わかりやすいところでは、消毒や衛生環境について、そして産地から製造工程、物流に至るまで、商品のトレーサビリティへの生活者の視線は、コロナ前とは比較にならないほど厳しくなりました。ソーシャルシフトは、やればやるほどコストがかかります。だから、ソーシャルシフトも付加価値に転換しないと、言いかえればビジネスにしていかないと、企業自体の存続が難しい状況なのです。つまり、企業が提供する商品・サービスは、何らかのソーシャルプロダクツとしての要素を持っていないと、単なる値上げ商品としてしか見られないということです。

ソーシャルプロダクツアワード

私が事務局長をしている一般社団法人ソーシャルプロダクツ普及推進協会(APSP)では、毎年ソーシャルプロダクツアワードを開催しており、今回で10回目になります。
記念すべき10回目のソーシャルプロダクツアワードのエントリー受付が、7月1日からはじまっています(10月16日24時締切 https://www.apsp.or.jp/socialproductsaward/)。

ソーシャルプロダクツアワードは、ソーシャルプロダクツの取り組みをしている企業や団体に光を当てようという主旨で2013年からはじまりました。スタート当時ソーシャルプロダクツに取り組んでいたのは、零細企業や団体が大半でした。

アワードの審査基準としては、「社会性」も重要ですが、「商品性」(プロダクトやサービス自体の品質)も重視しています。また価値が生活者に伝わるようなストーリー性も審査対象です。なぜなら、環境に優しいから・良いことをしているから・困っている人たちを助けたいから、という社会性だけでは、一時は売れるかもしれませんが、継続的なビジネスにはならないと考えるからです。商品としての機能性・使いやすさ・美味しさ、という一定の品質が担保されていて、そのうえで社会問題の解決につながっている。しかもそれらに価値を感じないと継続的なビジネスにもなりませんし、市場も広がらないと考えています。

このアワードは、SDGsの後押しもあって2019年第8回からエントリー数が一気に増えました。またこの第8回では、年度テーマの大賞にニチバンセロテープ®、自由テーマの大賞にサラヤ ハンドラボ、優秀賞にカゴメ野菜生活100季節限定シリーズ、生活者審査員にアサヒビール森のタンブラーといった、ナショナルブランドのメーカーが上位賞を取るなどし、一気に商品・サービスのレベルが上がりました。

新たな同質化問題を乗り越える

ソーシャルプロダクツのレベルが上がり、特別なものでなく一般化してくると、同質化の問題が起こってきます。そもそもSDGs自体が、2030年までに「誰ひとり取り残さない」ために達成する目標なので、国も企業も団体もすべてが取り組むことになります。そうなると、SDGsという取り組み自体、同質化していきます。

ビジネスでの同質化は、価格競争と競争淘汰を意味します。だからこそ、絶対的ファンをつくる感情的差異化が重要になるのです。

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つまり、コスト上昇を付加価値に変えるにはソーシャルプロダクツに取り組むこと。それが感情的差異性を生み、「好き」だから買い続けるファンをつくるということ。それが商品やサービスのブランドを強くし、SDGsをビジネスにつなげることになるのです。サステナブルがファンをつくり会社を強くする。このメカニズムについては、次回のコラムでもご紹介したいと思います。


コンサルタントフォト_深井賢一_値上げを共感に変えるサステナブルブランディング(リブランドならYRK&)(BtoBブランディング)

株式会社YRK and
CMO / 取締役 兼 TOKYO代表
一般社団法人ソーシャルプロダクツ普及推進協会 事務局長
深井 賢一
Writer

株式会社YRK and
CMO / 取締役 兼 TOKYO代表

一般社団法人ソーシャルプロダクツ普及推進協会 事務局長
深井 賢一

一般社団法人ソーシャルプロダクツ普及推進協会 事務局長。1989年 株式会社 YRK and入社。マーケティングプランナーとして、食品・日用品・医薬品などのマーケティングやプロモーション、流通小売業の業態開発・売場開発に携わる。現在はソーシャルプロダクツの適正な市場普及や、SDGsの本業化・ブランディング・コミュニケーション活用を企業に導入するためコンサルタントとして活躍。