# 90年続く老舗の寿司専門店「京樽」の、顧客体験を核にしたリブランディング。

2024.06.19

顧客体験を核にしたリブランディングと働く人が輝く仕組みづくり_TOPイメージ



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今回のコラムでは、筆者が担当するクライアント、FOOD & LIFE COMPANIES様のブランド、お持ち帰り鮨専門店『京樽』の「リブランディングプロジェクト」を取り上げます。

焦点となるのは、「CX(顧客体験)の最大化と働き方のデザイン」。
本プロジェクトでは、具体的にどのようなアプローチで成功に導いたのかを紐解くと共に、後半ではYRK&が考える「ブランド浸透に立脚した業務プロセス改革」についても解説いたします。

京樽パッケージ_CX(顧客体験)の最大化と働き方のデザイン

京樽外観デザイン_CX(顧客体験)の最大化と働き方のデザイン

90年の歴史を持つ京樽ブランドの
現状と課題

京樽は、伝統の上方鮨を提供する持ち帰り鮨の専門店で、その歴史は90年に及びます。
京都に割烹料理店として創業したのが始まりで、昭和13年には東京都中央区に料亭「京樽」がオープン。その後、茶きん鮨と上方鮨を販売する「京樽」第1号店を上野百貨店のれん街に出店してからは、100%直営方式によるチェーン展開を推進していきます。

90年の歴史を持つ京樽ブランドの現状と課題

しかし、「寿司店・回転寿司・持ち帰り寿司」を取り巻く市場環境は大きく変化し、
「寿司」自体のコモディティ化が加速する中、90年に及ぶ京樽ブランドが現代の中食市場ニーズに合わなくなってくるという課題に直面するのです。
日常の食事では京樽以外にもコンビニ、スーパーで安価で買えるお寿司も提供されるようになり、昔から京樽を知っているシニア層とは異なり、若年層にとって京樽は昔からあるブランドであるがゆえに、少し古く思われたり、暗かったりと、入りづらい印象をもたれるようになってしまいました。

この度リブランディングを実施する上でのポイントとしては、
古い・暗いといった入りづらい印象を払拭し、現代のお客様に伝統と革新を感じてもらいつつも、多くの人が訪問しやすいように、もっとカジュアルに常に高い品質のお鮨を提供するブランドに生まれ変わらせることでした。
しかし、表層的なデザイン変更やブランドイメージの刷新を施しても、これらの目的を達成することは非常に難しく、インパクトがあってもそれは一過性のものに過ぎません。

よって、最優先事項は「顧客体験」と、「従業員の働きやすさ」。
この2つを変革させることを前提にブランドを再設計し、京樽というブランドの本質そのものを再定義していくことが必要だと考えました。すなわち、90年続くブランドを時代の変化に適応させるべく「若年層へアプローチする若返り」を果たすことが重要になります。

そこで、新しいコンセプトを持つ新店舗へのリニューアルに着手しました。
気軽に立ち寄りやすいブランドへ。「“カジュアル”な京樽。今日いいかも京樽。」を社内コンセプトにプロジェクトが進みます。

まずは、圧倒的にわかりやすい視覚からのリデザインに着手します。90年続く京樽のブランドロゴを現代的にアップデートし、ブランドのカラーを明るいグリーンに変更。クリエイティブを洗練させることに注力しました。
同時に、目立たない存在だった京樽の定番商品である“茶きん鮨”をモチーフにしたキャラクターも全面的にリニューアル。プロジェクトメンバーの中には昔のキャラクターに愛着を感じる方もいましたが、チーム内の変革の意識を生み出すため、社長が昔のキャラクターには別れを告げよう!とメンバー全員に話をされました。

「若年層へアプローチする若返り」_キャラクターリニューアルデザイン

クリエイティブシンキングによる、
CX(顧客体験)のデザイン

京樽は「店舗」が顧客との最大の接点です。

そこで、店舗での顧客体験を最大化するために徹底的に店舗の課題を洗い出します。
店舗訪問を重ねると、高めのショーケースがスタッフとお客様を遮る形になってしまっており、商品の受け渡しがしづらかったり、接客時の会話がしづらい状況になっていました。これらの問題を解決する為には、オペレーション領域のアップデートを行う必要があると考えました。

実際に働いている人たちの意見を取り入れ、変えてはいけない所と変えていく所を慎重に模索。その結果、セルフレジの導入、一体型でフルフラットなショーケース、選びやすい陳列、商品がとにかく美味しそうに見える透明パッケージや選びやすいレイアウトなど、顧客体験を再構築していきました。

顧客体験を再構築_ショーケースパッケージデザイン

飲食は市場の移り変わりが早いのでスピードを重視しプロトタイプをどんどんプロジェクトメンバーにご提案しました。即断即決という印象です。
良いものはいい、悪いものは変える。社長のスピード感のある決断で、店舗が完成するまでに半年もかかりませんでした。市場に投下するスピードも大切。可視化の質にこだわることも大切だが、ローンチのスピードはもっと大切なことです。
店舗外観は勿論、ショーケースやパッケージまで、京樽の店舗は白が基調の明るく洗練された店舗へ生まれ変わりました。

当然、当初から掲げている「顧客体験」と「従業員の働きやすさ」の具現化も忘れてはいけません。販売スタッフと常連のお客さんの間にもコミュニケーションが生まれるように設計し直しました。
さらに細部へもこだわります。テイクアウトサービスで重要なのは持ち帰る時のショッパーです。ミスタードーナツやサーティーワンアイスクリームもそうですが、すれ違った人があの箱を見たら買って帰りたくなりますよね。この顧客体験を落し込み、お鮨を持ち帰りたくなるようなパッケージデザインを作りました。
ちなみに、皆さんは働く時にどんな会社で働きたいですか?少なくともカッコ悪いより、オシャレなところで働きたいですよね。
そこでユニフォームのデザインやネームプレートなどスタッフが身に纏う部分の細かい部分にも、リブランディングプロジェクトの一環として京樽様主導で進行され、弊社もデザインのアドバイスをさせていただきました。

新しい顧客体験の仮説設計_ユニフォーム・ネームプレートデザイン

結果、販売スタッフの方が元気になったなどの声もいただきました。販売スタッフとお客様の間に、より良い対話が生まれることがリピートにもつながり、店内の活気に満ち溢れる顧客体験がより一層豊かなものになるようなリブランディングを実施しています。

YRK&でご支援させていただいた結果、短期的な成果ではありますが、新店舗オープンの結果として、テイクアウト需要が高まっていたコロナ禍と比べても、客数、売上、客単価ともに、大幅に向上させることができました。

自信や誇り、やりがいを持って楽しく働ける環境を用意することで、店舗で働く従業員が輝くことが出来れば、必ずブランドは生まれ変わる、という信念がリブランディングには求められます。そしてその効果は、単なる外観の変化といったデザイン性のみならず、ブランド全体の文化や価値観、働く従業員のマインドを一新していくのです。
「価値の再定義→顧客体験価値のデザイン→人が輝くしくみ化→収益化」という流れをデザインしていくことが、これからのリブランディングプロジェクトでは必要不可欠となるでしょう。

ロジカルシンキングによる、
働く人が輝やく仕組みのデザイン

さてここからは、ブランド浸透の仕組みづくりについて、YRK&の考えをご紹介いたします。
リブランディングで事業を成長させるためには、現場で働く人が輝くための“業務プロセス全体の再設計”が必要であるとYRK&は考えています。

マクロな視点に立つと、少子高齢化による労働力不足は大きな課題として浮き彫りになっており、現場におけるスタッフ稼働オペレーションの最適化、接客品質レベルの平準化といった業務改革や業務効率化が今、急速に求められています。
裏を返せば、人員不足の中で接客品質のレベルを高め、売上を維持させようとすると、どうしても一人当たりに負荷がかかって労働環境は悪くなるということです。
そうなると、スタッフのモチベーションと接客品質が下がり、結果として“ブランドが提供したい本来の価値”をお客様へ届けることができなくなります。

そこで必要になる視点が、「コア業務」への集中です。

ここで言うコア業務とは、スタッフ自らがブランドの伝道師(エバンジェリスト)となり、
“ブランドが提供したい本来の価値”をお客様へ提供する業務です。
時にそれは、接客時の笑顔やお客様との会話や、提供する商品の丁寧な説明、そのブランドに携わる上で必要な専門的な業務であったりする訳ですが、そこには働く人が輝き、やりがいをもって働くことができる職場環境が必要になります。
そのためには、「ノンコア業務」をいかに減らすことができるか?という視点が重要になってきます。実際現場では「ノンコア業務」によって時間が削られ、「コア業務」がやりたくてもできない状況に陥っており、結果として現場にブランドが浸透せず、お客様にブランド価値を届けることが出来ないといった事態が非常に多く存在します。

ここで必要な要素が、BPR(ビジネスプロセス・リエンジニアリング)とノンコア業務のBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)という2つの業務改革策です。

BPR(ビジネスプロセス・リエンジニアリング)とノンコア業務のBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)という2つの業務改革策

現場スタッフにコア業務へ集中してもらうため、店舗オペレーションを分析し、業務プロセスを可視化。ボトルネックになる箇所を徹底的に洗い出します。どのような仕組み・システムで動いているのか?どこを改善すれば本質的な改善に繋がるのか?既存の仕組みや習慣を再構築(リエンジニアリング)し、コア業務とノンコア業務を切り分け、ノンコア業務を戦略的にアウトソーシングする。
この一連の取り組みが、「ブランド浸透の仕組みづくり」であると、YRK&は考えます。

リブランディングに重要な「イノベーション思考」と「オペレーション思考」

現場で働く人が輝くことが出来れば、必ずブランドは変わるという信念がリブランディングには求められます。これらの変革は、単なる外観のみならず、ブランド全体の文化や価値観を一新していくのです。人々を魅了するReBRANDINGには、0→1でイノベーションを起こすブランド立案だけでなく、オペレーティブな「ING」が不可欠です。ブランドを持続可能な状態に導くYRK&の、本質的なリブランディングに、今後も是非ご期待ください。

BRAND×ING(PMO×CCD×BPO)


株式会社 YRK and
ブランドクリエイティブユニット(BCU)
ブランドクリエイティブディレクター
大西 イッセイ
Writer

株式会社 YRK and
ブランドクリエイティブユニット(BCU)
ブランドクリエイティブディレクター
大西 イッセイ

2016年株式会社 YRK and入社。 広告クリエイティブを得意分野とし、最終的なメディアと生活者の接点から逆算したブランドデザインを構築。クライアントへの粘り強いヒアリングからコンセプトメイクを行い、ストーリー性やエモーショナルな要素を重視した一貫性のあるクリエイティブディレクションをトータルに行うことで真似のできないブランドを成功へと導く。