LUSHから学ぶ熱量が心を動かすインナーブランディング_TOP(リブランディングマガジン)(リブランドならYRK&)


自分たちが一番信じているから、“ラッシュ”は成長し続ける。

5億円で開催したグローバルミーティングも、私たちにとっては人への投資。

「ブランドを見直し、グローバル規模のイベントを始めて3年が経って、ほとんどのスタッフが「同じ船に乗っている」という実感を持ったと思います。それがビジネスの成長につながっています。」 By 創業者

みなさんはこれらのメッセージを聞いて、どう感じましたか?

ブランドが成長するためは、まずは自分たちの熱量を最重要視していることがわかります。

これらのメッセージはイギリスのドーセットに本社を置き、世界に930店舗を展開するハンドメイド化粧品ブランド「LUSH」によるものです。

彼らが大切にするブランド戦略とは?

戦略、と難しく言うより、“LUSHらしさ”を見出すには?愛される姿になるには?どんなスタンスで佇むことが重要か?今回は彼らの歩んできたインナーブランディングを、本来の意図とは異なる箇所があるかもしれまんが、私なりに紐解いていきたいと思います。

Index

  1. “意外性”と“体温”を感じるブランドストーリー
  2. インナーブランディングに必要な“モラル”とは
  3. 国境を越えた想いの共有は“インスピレーション”で
  4. 徹底的な求心力で、社員1人ひとりがブランドを創る。
  5. 番外編

“意外性”と“体温”を感じるブランドストーリー

そもそもこの「LUSH」という化粧品ブランド、みなさんのイメージはどうでしょうか?
「カラフルで、お菓子みたい…?」「色々着色料とか人工的なものが入ってそう…?」
そう思った人は多いのではないでしょうか?実は、わたしも感じていたのですが…

『地球を、傷つけない。』これは、LUSHのブランド信念です。

LUSH_ブランディング事例image01(リブランドならYRK&)(リブランディングマガジン)

あれそうなの?“意外だ”と思いませんか?

そもそも環境に配慮した原材料を使用するだけでなく、製造時のエネルギーの削減や動物実験反対など、創業時から、リジェネレーション(再生)の信念で活動されています。
ひとつ、“再生への物語”を挙げましょう。「スマトラ シャンプーバー」という商品があります。

“再生の物語”「スマトラ シャンプーバー」

LUSH_ブランディング事例image02(リブランドならYRK&)(リブランディングマガジン)

化粧品の原料となるパーム油を手に入れるため違法な森林伐採が続いており、絶滅危惧種スマトラオランウータンの住処を奪われていました…。
LUSHは、売上の全額森林保護団体へ寄付し、東京ドーム約10個分という広大な土地を購入。原材料もそこで育て、持続的に現地コミュニティの人々と付き合い、元の生態系が整う森林再生させる。本質的に「地球を元の状態に再生させる」仕組みを作っています。

“体温”を感じるブランドの本質

ブランドビジョンを覗いてみると、

「ハッピー&ヘルシーライフを追求し、既成概念に囚われることなく、化粧品業界の新たなカテゴリーのパイオニアとして境界線に挑み続ける」

こう掲げています。

創業当時、キッチンで手作りのコスメを創作し始めたマークコンスタンティンさんが根っこにある思考は、私たちの毎日の生活を「みずみずしく、豊かに」してあげたいというものでした。
ただ素直に、その想いを実現させることが、ブランドらしさを創り上げるLUSHの原点なのです。ブランド=創業者の人格、と言いますが、まさに体温を感じるバックボーンがあります。

インナーブランディングに必要な“モラル”とは

世界の49の国と地域で、約930店舗まで拡大をしたLUSHですが、世界展開をすると、当然、各国で翻訳が行われます。その中で、ブランド信念も少しずつ変わってしまいました。

LUSH_ブランディング事例image03(リブランドならYRK&)(リブランディングマガジン)

2013年頃から、次々に市場を拡大していく中、「動物実験を行わない」「環境に配慮した製品づくり」というブランド信念より、「カラフルな石鹸を売っているブランド」と言うイメージが先行し始め、同社の売上高は世界的に伸び悩むことに。原因は急速な拡張に対し、大切にしていた創業時の思想が、社内外に浸透していないことでした。

「チームのみんな。売上を上げるより、“モラル”を上げよう。」

そんな苦戦の渦の中にも関わらず、とても倫理的な印象を纏ったこのセリフ。これは、創業者マーク・コンスタンティンさんが全社員に向けた言葉です。もしも、自分が一社員として耳に入ったとしたら…少しピクッとなり、背筋が伸びると思います。

同年、LUSHはブランドの軌道修正に本格的に着手しました。

ブランドの体幹とも言える創立当時の理念である、「Fresh Lush Life(人も動物も地球も、ハッピーで健やかに)」に立ち返る方針を固め、決して表層的な変革ではなく、原点のストーリーを再確認し、社員同士で共鳴をし合いながら、ブランドロゴ、パッケージ、ストアの空間デザインを一新しました。

国境を越えた想いの共有は、“インスピレーション”で

LUSHでは“世界中の国境を超えた社員同士で気持ちを共有する場”として「営業会議」が開催されるそうですが、これも軌道修正を行うリブランディングプロジェクトの一貫です。

LUSH_ブランディング事例image04(リブランドならYRK&)(リブランディングマガジン)

この営業会議では「ディレクション」ではなく「インスピレーション」が重要とされていると強く感じました。

誰かの指示で動くのではなく、「ブランドを守るためには?」「ブランドを自分ごととして捉えられるようになるには?」と自ら考え、自身から湧き上がったもの(想い・感覚)によって突き動かされているのです。

クリエイティブ視点で、今回私が感じた事として、社員にブランドの意思をインストールし、自分ゴトへ芽生えさせるための3つのポイントをまとめてみました。

LUSH_ブランディング事例image05(リブランドならYRK&)(リブランディングマガジン)

①自分ならどう動くか?余白を残す。

LUSH_ブランディング事例image6(リブランドならYRK&)(リブランディングマガジン)

②創立者の遺伝子を残していく。

LUSH_ブランディング事例image7(リブランドならYRK&)(リブランディングマガジン)

③日常業務の中で、ハッと気づく仕組みづくり。

LUSH_ブランディング事例image8(リブランドならYRK&)(リブランディングマガジン)

徹底的な求心力で、社員1人ひとりがブランドを創る。

これらに共通することは、“人任せにしていない”こと。

まずは、自分たち社員が、自分たちのブランドを一番愛せるコンディションにあるかどうか?その熱の集合体が、周りを惹きつけるエネルギーをもった組織になることがインナーブランディングの美しいカタチだと思うのです。

このマインドを持つブランドは強いです。
なぜなら、組織の持つエネルギーが外側へとにじみ出ることで、自然と良いブランドであると認知されるようになるからです。

皆さんはいかがでしょうか?会社がもつ背景を、自分はどう感じていますか?目の前の人に、自分の会社やブランドについて夢中になって話せる準備はできていますか?

もし、少しでも不安がよぎるのであれば、まずは社内へのインスピレーションが大切です。

ブランドの成長には、見た目の整えだけでは決してコミットできません。内側のコンディションや情熱が最高潮かどうか?自ずと外ににじみ出ていくのです。そして、にじみ出てきた熱量や世界観を嗅ぎつけ、共鳴してくれる人が必ず現れてきます。

ここからが、真のブランドのはじまりです。

番外編

アジア最大級の売上を誇る新宿店への潜入レポートです。

LUSH_ブランディング事例image09(リブランドならYRK&)(リブランディングマガジン)

お店にお伺いしてから約1時間ほど、ラッシュの魅力についてお話してくださいました。今回、お話をお伺いしたのはアルバイト時代からラッシュのことが好きで、そのまま正社員として入社された方でしたが、私が驚いたのは、ブランドへの愛と情熱の深さでした。

私もラッシュの社員の方のエンゲージメントの高さと情熱について、すでに知ってはいたものの、あまりにも熱く語ってくださったので、心が揺さぶられました。素晴らしいブランド力だと思います。

熱いエピソードをあげると尽きないのですが…過去に海外支店との交流があった社員から受け継いだバッジを、今も常に身に付けていること、ラッシュの前身である「cosmetic to go」のブランドブックを愛読していること、など、ブランドに対する熱い想いを夢中になって語ってくださいました。

最後には、ひとつバスボムをプレゼントしていただきました。バスボムを渡してくださった時の社員さんの笑顔は今でも覚えています。なぜなら、純粋にブランドのファンの顔をしており、目が輝いていたからです。

素敵なブランドは、圧倒的な創業者のブランド信念と、信念を自分ごと化した現場の人々の熱い想いの集合体で出来上がっているのだと改めて強く感じました。

writer
山下 亮