2024.12.20
東京エリアで直営37店舗を展開する、中国ラーメンチェーン店「揚州商人」。
こだわり抜いたラーメンはどれも「中国・揚州マインド」に溢れ、メニューだけでなく店舗までも中国の街角を切り抜いたような空間や空気づくりが徹底されています。コロナショックで過去最高の赤字を出すも、徹底した現場とのコミュニケーションで改善を繰り返し、コロナ前の130%で業績をV字回復させています。アルバイトを含めると社員数が1,000人を超えた中、V字回復の裏には、従業員の「価値ある人生を創る」ことを前提とした様々な人事制度改革や研修制度の再構築と運用があったといいます。今回は、徹底した「社員ファースト」な経営戦略を貫く、三好 一太朗代表取締役社長に、人的資本経営の本質をお伺いしました。
コロナ禍以降、V字回復を実現されている御社ですが、詳しくお話しいただいてもよろしいでしょうか。
そうですね。コロナの影響が日本でも現れはじめた2020年3月くらいから、大きく業績に影響が出てきていました。その手前の2月の決算では33億3000万円というところでした。そしてその翌年が、25億。「8億円」ほど売上がダウンしました。
「8億円」売上ダウンですか…。その後、V字回復されたということでしたが、どのように推移したのでしょうか?
前期の数字にはなりますが、2024年2月決算で「44億円」になりました。そして、今期の見込みとしては、50億に届くかというようなところです。
素晴らしいですね。コロナ禍のお話に戻りますが、営業停止の命令などが全国的に出る中で売上が25億円となった際には、やはり解雇などは行われたのでしょうか。
実は、従業員の解雇は一切しませんでした。基本的に給与も賞与もほぼカットはしていません。
コロナ禍で営業が止められて売上が落ちている状況下でも、人を大切にして給与カットや解雇には至らなかった、その根源的な想いをお伺いしてもよろしいでしょうか。
やはりコロナは感染症という側面もあったので、従業員の中でも「お店に立つのが怖い」という方も少なからずいました。このような状況でもお店を営業してもらっていることへの感謝。また、これからとんでもない闇に向かっていく時に、自分自身の給与も削られた中では不安が2倍になってしまうと思ったんです。
あとは、自分たちの事業の未来を見据えた判断として、従業員を大切にしようと思いました。「飲食業」って一般的には不人気な業界であり、長らく人手不足に困っています。我々も決してコロナ禍が一生続くものとは思っていませんでしたし、必ず光が見えてくるし、止まない雨はないと思っていた当時、逆に攻め手としてできることはなんだろう?と考えた時に、むしろ社員の採用でした。
コロナ禍で採用した社員は、とりわけ精神力やメンタルが強い方が多いのが特徴だと思います。自分の会社がなくなってしまったとか、生活がむずかしくなったとか、今まで自分の夢を追っていたが自分の人生が立ち行かなくなったという人が多く面接にやってきました。目的意識や緊張感を持って入社してくる方が多かった印象があります。
コロナ禍で社員を採用するということに対して社内からの反対はなかったのでしょうか?
コロナ禍で社内も混乱している状況だったので、反対もなかったです。ただ「社長明日はどっちなんですか」というように常に方向性を社内外から問われる日々でした。だからこそ、そのなかで我々はここだけがチャンスと思い、「採用はする」「給与は基本的には満額を出す」ことにしました。
我々の考えは「人を大切にする」。
大切にするというのは、「可愛がること」ではなく、その人の“未来の道をちゃんと作ること”であるという信念を持ってやっていました。
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三好社長のような「人を大切にする」経営哲学は、一体どのタイミングで育まれたのでしょうか。
父に“この会社を継ぐのであれば飲食店5か所でバイトをしなさい”と高校生の入学時に言われました。そこで、様々な飲食店でアルバイトをさせていただきました。その中で、私が強く感じたのは「現場の経験が非常に大きい」「お店は人がつくっている」ということでした。
お店の名前をあげると、通常はメニューや料理のイメージが浮かぶのでしょうけれど、私は働いている人の顔がまず浮かんできました。この経験は「店舗は人がつくっている」ということに改めて気づくきっかけになりました。
例えば、従業員の状態意識が上がっているか?お客様に良いものを出そうとしているか?そういった力が満ちているかどうかで、良い店かどうかが決まる。このようなことは、誰かに倫理として教わったというよりも、ずっと飲食店の現場で働く中で肌で感じてきました。理論は、その後もちろん色々勉強しましたが、現場の経験はすごく影響していると思います。
なるほど。このようなところから、新たに策定した経営理念につながってくるのでしょうか。
我々の企業理念は・・・
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事業の変革を通じて、様々な危機を乗り越え、時代の牽引者となった、企業家・経営者様に焦点を当てたプロフェッショナル同士の対談記事です。
過酷な経営者業を生き抜くための、事業変革やリブランディングのヒントになれば幸いです。