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加速する人口減少とコスト上昇インパクトを乗り越える
厚生労働省が2月27日に発表した2023年の出生数(外国人含む速報値)は、75万8631人と前年から5.1%減少。しかも減少ペースは想定より速く、この傾向は35年に50万人を割り込むスピード。
この先さらに日本の人口減少は加速していくと想像できます。

そこに追い打ちをかけているのが、原材料価格の上昇です。値上げをしてもコスト高が止まらず追いつかないという状況が続いています。
この高騰の要因は、すべて社会問題コストなので、社会のあらゆることが良い方向に向かわないと、コストが下がるとは考えにくい状況です。
この2つの構造的なインパクトへの小売業のヒントを考えるコラムの後編です。
まだ前半のコラムを読まれていない方こちらからご一読ください。

Index

元気な店に共通する「現場力」

これまでのチェーンオペレーションは、本部が決めたことを各店で実施させるというのが一般的でした。「陳列やディスプレイなど売場で面倒なことをさせてはダメ」「手間がかかり売場の負担になる企画はダメ」という本部の考えも多く見受けられました。

それでも、本部の販売企画に対して、「企画通りに売場に商品が並んでいない」「演出ができていない」ということは、結構あるある問題です。
そんな中で元気な店の共通点は「現場力」
それは、売りの現場のパートさんが販促や品揃えを企画したり、時には商品企画にまで参画して活躍している。前編のコラムでも紹介した北九州のSMチェーン「ハローデイ」や埼玉の「ヤオコー」などがその代表です。

理由を伝えてファンを増やす

これからの日本は人口減少が加速します。「安い」「近い」「便利」「大きい」という理由で来店してくれるお客様だけではもちこたえられません。そういうお客様は「もっと安い」「もっと近い」「もっと便利」「もっと大きい」店に流れるからです。その最たる店舗がアマゾンや楽天です。
だからこそリアル店舗は、「好きだから来てくれるファン」をつくることが重要になるのです。
そのためには、地域ならではの商品や売場を提供することが大事で、品揃えした商品の特徴や、自店のお客様にピッタリな「理由」を“きちんと”伝えなければいけません。
必要になるのは、商品や売場の背景を語る言葉であり物語です。
それを手間だと排除しては、ファンをつくることはできません。
こんな話をすると、「その通りだけど、ハローデイだからできる、ヤオコーだから特別」「うちのお店のパートさんには、そんな技術も意欲もない」という意見を耳にしますが、本当にそうでしょうか?
実際には、どのお店のパートさんも「力」を持っています。ただ、その「力」を「発揮するきっかけ」と「引き出す仕掛け」がないだけです。

「パートさん」の力を引き出す仕掛け

ある地域スーパー(25店)では、『売場を変えてもいいんです企画』が好評です。
売場のパートさんたちが独自に考えた販促企画を、どしどし売場で実施してください、という企画ですが、このスーパーでは毎月盛んに実施されお客様にも評判です。
このスーパーは、パートさんに特別な売場づくりノウハウを提供したわけでも、コンテストで賞金を出しているわけでもありません。それなのに、パートさんが手間暇を惜しまず、企画を考え、競うように売場づくりをしているのです。
これには、ちょっとした「仕掛け」があります。
パートさんたちが自分たちで考えた企画で売場をつくり、その売場をスマホで撮って、ネット上にコメントと共に掲載するのです。掲載された写真とコメントは、本部スタッフや他店舗のスタッフ、そして関係する卸やメーカー担当者も見ることができ、コメントを返すこともできるのです。

深井コラム②_‟地域をミカタに”愛される店になるための仕組みづくり(リブランディングならYRK&)_図説①

この「仕掛け」は、当社のMiinaというプラットフォームを使って実現したものです。
自分がつくった売場を撮ってMiinaに掲載すると、他の売場の写真も見られるわけです。自分の方がいい売場だとか、あの店の方が上手だとか、自然と競争心を掻き立てられます。
さらに、掲載された売場の写真とコメントに「フィードバックされる仕組み」があります。「いい売場だね!」とか「これつくるの大変だったでしょ」というコメントがあればうれしくなります。それが本部のバイヤーや、対象商品のメーカー担当者からのコメントであれば売場はイキイキします。

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「見せたくなる」「やりたくなる」下意上達の店づくり

これまでの上意下達のオペレーションでは、本部の指示に対して「やったかどうか」「成果はあったか」というチェックと検証が中心でした。
一方、現場力を活かす「下意上達」のオペレーションで重要になるのは、個々の現場に貯まっている情報を共有し「見える化する仕掛け」と「フィードバックをする仕組み」です。
こうした「仕掛け」や「仕組み」があると、自分の企画やつくった売場を誰かに見てもらいたくなり、「もっともっと」とチャレンジしたくなるのです。
結果的に本部に「やらされている」仕事が、誰かのために「やりたい」仕事に変わります。面倒で手間のかかる売場づくりは、お客様に喜んでもらう売場づくりになるのです。

地域の生活を取り入れると魅力的になる

アメリカで食品スーパー(SM)を見ると、クローガー、ディーン&デルーカ、ホールフーズマーケット、トレーダージョーズ、スチューレオナード等々、すべてのSMが個性的です。
コンセプト、店舗レイアウト、品揃え、売場づくり、接客・・・お店を構成する何もかも、それぞれ特色がハッキリしていて、店内を見ただけでどのSMなのかを判別できるようになりました。

深井コラム②_‟地域をミカタに”愛される店になるための仕組みづくり(リブランディングならYRK&)_DEAN&DELUCA(ディーン・アンド・デルーカ)深井コラム②_‟地域をミカタに”愛される店になるための仕組みづくり(リブランディングならYRK&)_画像②深井コラム②_‟地域をミカタに”愛される店になるための仕組みづくり(リブランディングならYRK&)_画像③

一方、日本のSMは、最近でこそ惣菜から始まる店も出てきましたが、基本は生鮮三品にはじまり日配総菜が壁面に並び、その中に加工食品と日用雑貨品が配置されるというレイアウトです。
地域によって季節も生活も食文化も大きく違うのに、どの地域、どの店に行っても、だいたい同じレイアウト。
日本は南北・東西に長い島国。同じ国内でも気温差、四季の差があります。
また山と海に囲まれた国土のおかげで、その地域で採れる産物も異なり、また生活や文化も違います。
だからこそ物流と情報流が発達した今でも、その地域でしか食べられていない食材やメニュー、味付けがあります。
ナショナルブランド(NB)の加工食品は、全国どこでも同じです。だからメーカーが提案する有名シェフや料理研究家のアレンジメニューやレシピよりも、その地域ならではの食べ方やレシピの方が活きるのです。
例えばNB商品を、店のパートさんのご家庭や実家に伝わる料理に使ってのアレンジメニュー提案は、地域のお客様にとっては身近だし、NBメーカーにとっては、その店その地域だけのメニューの出来あがりです。
こんな工夫ができるのも、地域に根ざした店を持つ小売業ならではの強みです。

地域の固有名詞情報を活かす

また、その地域で暮らしている人達だけが知る情報があります。例えば、回覧板で知る地域情報。自治会の掲示板で知る行事。
お母さんお父さんだから知る情報。たとえば、子供の学校給食の献立や運動会や遠足の日程、その他学校の行事全般です。
52週の生活・販売カレンダーは、以前から小売業で使われているものです。
1年間を52週に区切り、その週の旬の食材や社会催事などが紹介された生活カレンダーと、販促テーマと売場や商品構成までが書かれた販売カレンダーです。
また土日と平日の生活の違いを区切って、104週の販売カレンダーを使っている小売業もあります。
しかし実際の生活は、365日・24時間、人それぞれみんな違います。
そう考えると、本部で作成する平均的な情報の生活・販売カレンダーではなく、各店の地域の情報を集めた「365日カレンダー」を作成する方が、当然ながら地域に密着した情報提供や売場提案になるはずです。

365日生活に密着した店は「売場」から生まれる

たとえば、地域の小学校名と遠足の行き先に合わせた「〇〇小学校△△遠足のおやつ特集」。
当日の気候が暑くなりそうであれば、熱中症対策になるお菓子や飲み物が提案できます。
雨予報なら急遽「おうちおやつ特集」に変更です。
卒業式や入学式には、「〇△小学校卒業おめでとう!オードブル」。オードブルのパックには、「店長からのお祝いメッセージ」を入れればお店のファンが増えるはずです。
これまでの販売カレンダーにあった「遠足おやつ特集」「卒業お祝いごちそうフェア」も、地域の固有名詞が入っていれば、お客様の受け止め方は全く違うはずです。
地域密着、現場主義とは、その地域の生活を中心にした店づくり、売場づくりです。

深井コラム②_‟地域をミカタに”愛される店になるための仕組みづくり(リブランディングならYRK&)_スーパーで買い物する主婦

そして、その原動力が店のパート・アルバイトさんです。
パート・アルバイトさんは、店の周辺で生活をしている主婦や学生。つまり、商圏生活者と店をつなぐ重要なかけ橋なのです。

地域に愛される小売店を応援します!

日本スーパーマーケット協会によれば、日本のスーパーマーケットは、25店舗以下のチェーンが全体の83%を占めているそうです。それだけ地域に密着した中小のスーパーマーケットが今も活躍しているのです。
店の魅力は、品ぞろえであり、売場であり、そこで働く人そのものです。店の魅力はブランド(BRAND)とも言いかえられますが、店のBRANDは特に、毎日のオペレーション「動き」の中で醸成されます。それが、BRANDINGの重要な「ING」です。
YRK&では、そんな地域に密着したスーパーマーケットの魅力を引き出す「仕掛け」「仕組み」を提供しています。

深井コラム②_‟地域をミカタに”愛される店になるための仕組みづくり(リブランディングならYRK&)_図説③

人手不足を解消し売りをつくるPOPシステム「売技ナビ」
売場がイキイキするストアSNS「MiiNA」(ミーナ)
お客様・地域の生産者・バイヤーとのエンゲージメントをつくる「C-SO」(シーソー)
購買動機を触発する「デジタルサイネージ」

これらの仕組みを組み合わせて成果を出している地域のスーパーマーケットがあります。
ぜひ、お問い合わせください。


株式会社YRK and
常務取締役 TOKYO代表
一般社団法人ソーシャルプロダクツ普及推進協会 事務局長
深井 賢一
Writer

株式会社YRK and
常務取締役 TOKYO代表

一般社団法人ソーシャルプロダクツ普及推進協会 事務局長
深井 賢一

一般社団法人ソーシャルプロダクツ普及推進協会 事務局長。1989年 株式会社 YRK and入社。マーケティングプランナーとして、食品・日用品・医薬品などのマーケティングやプロモーション、流通小売業の業態開発・売場開発に携わる。現在はソーシャルプロダクツの適正な市場普及や、SDGsの本業化・ブランディング・コミュニケーション活用を企業に導入するためコンサルタントとして活躍。