ブランディングの強さと、組織の力は連動する_TOPバナー



ブランディングと聞くと、一般的には個々の商品に適応させる戦略というイメージが強いのではないでしょうか。高級バッグやアクセサリー、コスメや日用品、車や家電から始まり、コーヒーショップや地方の名産品まで、さまざまな成功事例が出てきています。

戸田コラム第2弾_ブランド画像
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最近では、商品だけではなくネット系のサービスやテーマパークなど、目に見える商品以外にもブランディングが重要であることが語られますが、それでもまだブランディングの捉え方は狭義だと感じます。

今日は、ブランディングがいかに万能で、どれだけ広範囲に経営や事業戦略にも適応できるのか?また、逆にブランド戦略を適応しないことが、いかにリスクであるか?という側面から、商品やサービス以外のブランド戦略導入のメリットを語っていきたいと思います。

Index

ブランディングは、人の動きを変える。

ブランディングは、商品やサービスだけではなく、企業や組織や、チームや部門などの生産性を向上させることにも適応できる優れものです。ブランディングの原点は、どんな時でも「WHY?(なぜこの事業をやっているのか?)」からスタートします。事業がスタートし始めると、WHYが希薄になり、やがて「WHAT(何を伝えるか?)」「WHERE / HOW(どこで、どう伝えるか?)」などに翻弄されます。
まずはこの「WHY?」を、はっきりと共通言語として存在させる必要があるのです。

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それは、なぜか?
それは、人の心を動かすには、「思想やストーリーと共に事業を語る必要がある」からです。これが存在する事業は、誰しもが協力をしたくなり、働きたい人も、買いたい人も集まりやすい状態を作ることができるのです。
逆に儲かるばかりで、志や理念のない事業には、一時的な報酬目当ての人たちが集まってくるだけで、長くは続きません。そういう人は、また次の会社に報酬で動きます。これは、商品やサービスも同じ。利便性や機能だけで買ってくれているユーザーは、顧客ではあっても、ファンではありません。より便利で、より機能的なものが現れたら、すぐに目移りします。
そのブランドに愛着もなにもないドライな関係性ですから、応援する気持ちも起こりません。理念やストーリーのないところには、人は長く滞在しないのです。

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0→1思考に立ち戻れるか?

何のために我々は今ここに集まっているのか。社会をどう変えたいのか?どう幸せにしたいのか?人生の貴重な時間を割いてまでこの事業にコミットをする理由はなんなのか?ここをどれだけ熱く語れるか?といった事で人は集まります。これが、組織を強くするための一丁目一番地。まさに、ブランディングとは、この言葉と人、そしてそれが持続する仕組みを作る仕事です。

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こうして綴ると、極めて当たり前の話に聞こえます。しかし、戦後の高度経済成長期や、事業の勃興期を経て、今連続成長期に入っている企業や組織は、過去の実績を維持継続、成長させることを目的化しています。つまり、0→1というより、1→2、1→10の思考。かつて先人たちが作り上げてくれた事業基盤が素晴らしくよくできた仕組みであるが故に、ほとんどの成熟企業は連続成長期路線を辿っています。決してそれが悪いわけではありませんが、昨年対比や、顕在化している課題の解決に行動が偏ってしまうことは事実。その弊害として、日本のかつての大組織は、どこもそれなりに少しずつ悪くなってきており、イノベーションと名のつく事業やサービスは、ほとんどがアメリカや中国で立ち上がり、経済の中心は海外に移ってしまいました。連続成長だけに頼ってきたツケが回ってきたのです。

一度ゼロベースに立ち戻って、リブランディングしてみよう!という、0→1の思考が、中々生まれにくい社会環境であることは間違いないのです。

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結局脳裏に焼きついているのは、目標数値。

連続成長路線の環境下で働くと、そもそも何のためにこの仕事をしているのか?が、極めて希薄になります。日々目の前にある山積した課題を必死に処理する毎日が繰り返されます。それはそれで組織に属している以上、重要な仕事であり否定はできません。
ただ、ブランディングという意味では非常に低評価と言わざるをえません。ブランド力は徐々に劣化し、常に周りにいる働く人とも、買う人ともドライな関係性に成り下がり、ブランドはますます弱体化していってしまうのです。
逆に、なぜ我々は存在するのか?何のために事業をやるのか?これを、チームで共有できている組織は強くなり、0→1の思考も働きやすいことは言うまでもありません。

しかし、一般的に組織で共有されやすいのは、理念やストーリーではなく、売上目標数値であることがほとんど。今年はいくらくらいの目標を超えていこう!という分かりやすい指標が脳内に刷り込まれ、この数値達成がいつのまにか目的化されてしまっているのです。

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すると、どうなるか?
組織は数字を作るために様々な知恵を絞り始めます。競合を調べて、値引きをしようか。どうすれば2個買ってもらえるか?顧客データを買ってアプローチできないか?人件費を削減、効率化できないか?などなど、議論は尽きません。
このような環境には、そもそも何のためにこの事業をやっているのか?を必死に論じる人もいなければ、ブランドの本来の価値について語る人間も居ません。

こんなことで、ファンは集まるのでしょうか?
一緒に働きたい!買い続けたい!と思うのは何故なのか?を改めて問うタイミングがきているのです。

過剰なものと、希少なもの。

モノは溢れています。もはやほとんどのものが便利さの上限に達しています。その差も、大きく見れば微差のものがほとんど。もはや便利さは飽和状態。
そのような中、人が求めるのは、「意味」です。働き手も不足しています。本当に必要なのは、報酬だけでしょうか?優秀な人間であればあるほど、オンリーワンの「意味」にやりがいを見出し、自分も企業も成長させたいと思うのではないでしょうか。
買い続ける「意味」。好きでいる「意味」。働く「意味」。繰り返しになりますが、これを常に語れる組織は強い。これこそがブランディング思考であり、強いブランドのスタート地点だと言えます。

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ワードは、「simple / clear / bold」に。

今、皆さんがお持ちの商品やサービス、企業や組織やチームは、何のために存在していますか?そこに理念はありますか?

最低限、この言語化は明確にしましょう。短い言葉で、端的に、分かりやすく。誰でも分かるように。「simple / clear / bold」。この3つがこれらのワードを作る時のキーです。

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株式会社YRK and
取締役 兼CBO
Branding Strategist
戸田 成人
Writer

株式会社YRK and
取締役 兼CBO
Branding Strategist
戸田 成人

2008年株式会社 YRK and(旧 株式会社ヤラカス舘)に入社。広告会社にて飲料、食品、通信、家電、アパレル、施設事業など、さまざまなメーカーや小売業種のマーケティング戦略と、クリエイティブ開発を担当した後、現在はYRK&にて事業コンサルティング責任者に従事。リブランディングに特化したブランディングストラテジストを担当。組織力を強化するインナーブランディングからアプローチし、企業におけるブランド強化を、外と内の両面から支援します。また新規事業立案などのイノベーション創出支援や教育支援。劣化した商品やサービスのリブランディング支援も行い、現場のオペレーション支援(BPR / BPO支援)までを一貫して実戦できることを強みとしています。2022年からはブランドマネージャー養成講座などのビジネススクールも運営。リブランディンのプロ人材育成のため、登壇、セミナー、コラム執筆などのあらゆる支援活動も行っています。