ブランド戦略は、マーケットインより、 プロダクトアウト? “環境音“を味方にする戦略立案とは。

2022.05.19

# ブランド戦略は、マーケットインより、 プロダクトアウト? “環境音“を味方にする戦略立案とは。


目次

  1. 環境音とは?
  2. 広告に当てはめてみるとどうか?
  3. YouTubeやリモートワークも、ひとつ
  4. さて、何が言いたいのか?
  5. 思い込みの重要性
  6. どちらがいいのか?
  7. 最も重要なことは?
  8. 仮説推論という手法

環境音とは?

タイトルに示した“環境音”とは、本人が主に目的として聞きたい音以外の、周辺の音。周辺の雑音のケースもあれば、心地のいいBGMだったり、密かに聞こえてくる人の会話だったり、動物たちの鳴き声だったり。街を歩いていても、お店の呼び込みや、隣を歩く人の会話、車やバイクの騒音。時には、緊急を要する放送だったりすることもあるでしょう。要するに、“環境音”とは、その時の目的には直接的には必要のない、周辺の情報です。

コンサルタントコラム_環境音がブランド戦略の要になる_image01(リブランドならYRK&)

広告に当てはめてみるとどうか?

これを、広告に当てはめて考えてみましょう。最近デジタルマーケティング界隈では、個人情報の観点から、cookie(ブラウザに情報を保存する仕組みのひとつ)の規制が話題になっています。WEBサイトを閲覧した人を追跡して広告を打つことがしにくくなると言うこと。行動ターゲティング広告の一つであり、よく活用されてきた広告手法です。

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私たちの生活でも、関連性の低い広告があまりにもしつこく出てくると、ブロックしたりしていませんか?私も、ブランディングにお仕事で関わるため、担当したお客様のマーケットを検索してみると、その度、調べた仕事関係の業界の広告に囲まれる事もしばしば。実は、普段の生活には関係のない広告だったりします。皆様もご経験があるのではないでしょうか。

YouTubeやリモートワークも、ひとつ

加えて、若年世代はTVもあまり見ません。見たとしてもお気に入りの番組だけだったり、録画などで自分の好きな時間に見ることが増えました。するとTVCM(新商品や新サービスの情報)に触れることも減り、新商品の情報などを意外と知らなかったりもします。

また、若い層に限らず、皆様もYouTubeなどを良く見るようになった今、必要のない、言わば“環境音”のような情報に触れる機会が少しずつ減っています。好きな志向性のものだけが、AIによりレコメンドされることはもはや当たり前になり、登録したチャンネルや、フォローした人の特定の情報だけを見ることにも慣れてきました。

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昔で言うテレビのチャンネルザッピングや、雑誌の飛ばし読みも少なくなり、必要のない情報はさらにシャットアウト。加えて「リモートワーク」では、ちょっとした休憩時間の雑談や、隣の会議室の会話が聞こえてくることもなくなりました。会社での“環境音”にあたるものさえも減ってきています。

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さて、何が言いたいのか?

さて、ここまでコラムを読んでくださった皆様。このコラムの結論は、「と言うわけで、ここで言う“環境音”などの、一見すると雑音のような情報も大事なので、好きな情報だけではなく、いろんな情報を把握しましょう!」となると思っておられませんか?実はそうではないのです。確かに、ブランディングをしていく上では、色々な多角的な情報や視点がなければ、いいブランドを創ることはできません。必要な情報だけをとっていては、社会の動きや、新しい情報は獲得できませんし、マーケティングをしていく上では非常に致命的なことになります。

しかし、今日は、意外にもその反対側に「ブランディングのチャンス」が実は存在することをお話しします。それは、「盲目的であることの重要性」です。

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思い込みの重要性

実は、ブランディングにとって重要なのは、過去の実績や、周りの環境音に左右されない、ある種盲目的な信念や「思い込み

なのです。圧倒的に深掘りしている自分の大好きな世界から、情報や仕組みを深く読み取り、本質を掴む。すると、これが新しいマーケットに向けた、新しいブランドの出発に繋がることがあります。

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例えば、大好きなコーヒーの情報を、日常的にとっていたとしましょう。巷の流行りのコーヒーショップには目もくれず、ただひたすらに自分の好きな味のコーヒー豆を研究していたとします。

その人は、おそらくそのコーヒーを美味しくいただくために、豆の味だけではなく、コーヒーカップのデザインや、それをいただく空間、またそのブランドストーリーにも夢を馳せながら、自分の大好きな世界を妄想して楽しんでいるでしょう。他から見ると、いわゆる自己満足の世界かもしれません。きっと「こんな新しい自分だけのコーヒーショップを将来できたらいいなぁー」と、日々勝手な妄想を膨らませ、その延長線上でいろんなコーヒーショップを主観的な視点で巡ることでしょう。これは、客観的に物事を調査することとは本質的に違う探索になります。

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しかし、日頃から“環境音”に敏感な方はどうでしょう。あそこの新商品はすごい!あそこは新しいビジネスモデルだ!カフェ事業はそもそもビジネスモデルが古いから、参入障壁も低いし出店は困難?・・・と、“環境音”や周到な調査から、さまざまな「リスク」を想像することが容易にできてしまいます。

そもそも、この事業をスタートさせることは、どんなにコーヒーが好きでも、「難しいのではないか?」となるかもしれません。当然、コーヒー屋さんを事業として捉えた時に、戦況から考えるのは確かに正しい判断です。

どちらがいいのか?

では、“環境音”を「気にする」or「気にしない」。これはどちらが良いのか。これは、すなわち、タイトルでも示したような、「マーケットイン」で考えるか、「プロダクトアウト」で考えるかの二元論に少し近いかもしれません。

それは、どちらか一つを取るということではなく、段階的に考えるべきことなのです。まずは、盲目的に「素敵だ!」と思う世界を、プロトタイピング(ひとまず見える形に)してみることが重要です。

企画書でも、イラストでも構いません。これを、我々ブランディングの世界では、「ありたい姿の可視化」と言います。いわゆる「ビジョン」にあたるものですね。まずは、それをいち早く可視化して、他人に共有できる形にする。そして、そこから改めて客観的にそのストーリーを見つめてみるのです。実際に作ると、色々な新しいヒントが見えてくるものです。

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次に、そこから、初めて“環境音”に徹底的に耳を傾けてみます。マーケットはどんな戦況か?ターゲットは十分に存在するのか?そのためには、このコンセプトをベースにどんな工夫をすればいいのか?何が価値なのか?進化の可能性は?と、ここにアップデートという考え方が生まれてきます。

すると、もしかすると、この事業は単純な「カフェ事業」ではなくなるかもしれません。事業としての成功を戦略に落とし込んでいくと、コーヒー豆の「サブスクリプション事業」かもしれませんし、「コーヒーに合うお菓子の専門店」にピボットするかもしれません。カフェのコンサル事業や、メタバースの中でコーヒー体験を提供する事業に進化するかもしれません。

つまり、戦術はいくらでも進化させていけるのです。

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最も重要なことは?

何より、ここで最も重要なことは「すでに行動し始めていること」です。

走り出した「思い込み」は、ひとまず可視化され、すでにアップデートの段階に入っているということが何よりも重要です。主観と客観の議論を繰り返し、可能性がなければすぐに考えを改め、素早く次に進めばいいのです。

これらを「アジャイル型ブランディング」または「スプリントブランディング」といいます。

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ブランディングの世界では、「実行すること」を重要視した重要な手法で、今非常に注目されているプロジェクトスタイルです。これは、“環境音”に耳を傾けすぎるあまり、考えすぎて結局何もやらないことや、大きく遅れてしまうことと比べるとどうでしょう。

ほんの少し長期的に見るだけで、圧倒的に価値があることなのではないでしょうか。今、世の中にはあらゆる情報やノウハウやビジネスのコツが溢れてしまっていて、開示されてしまっている時代です。情報格差は昔に比べて少ない逆に出てきている格差は、「行動格差」なのです。

仮説推論という手法

「デザイン思考」という言葉が最近よく出てきます。「仮説の推論」を立て、それを解像度の低い状態であっても、まずは「プロトタイピング(可視化)」し、どんどん改良を加えて、「アジャイル型でブラッシュアップ」していく。時には消費者の意見を素早く反映し、初期に設計したプランを否定することもある方法です。

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上記のコーヒーの事例は、些か極端な一例でもありました。参入障壁の低さや、飽和しているマーケットへのトライは少し無理があるでしょう。しかし、好きなものだけを見て周りを遮断し、ある種盲目的に良いと思うものを追求する。そこから、しっかりと「いい品質やサービスを作る」。

次に、“環境音”を徹底して戦略に組み込む。そこに、「行動を起こしたこと」が功を奏し、素晴らしいブランドを生み出す可能性が出てきているのです。また昔に比べ、色々な製品やサービスを素早く安価に提供できるようになった、時代の後押しも大きいのです。皆様も一度スマホを置き、情報を遮断し、「やってみたかった何か」を見つめ直して可視化してみてはいかがでしょうか。

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つまり、ブランディングの第一歩は、「まず行動を起こすこと」であり、失敗しないようにすることではないのです。私も、改めてトライしてみようと思います。こう考えると、ブランディングというものは、商売の技術というだけではなく、人生でやりたかった夢を叶える手法の一つなのかもしれません。

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株式会社YRK and
取締役 兼CBO
Branding Strategist
戸田 成人
Writer

株式会社YRK and
取締役 兼CBO
Branding Strategist
戸田 成人

2008年株式会社 YRK and(旧 株式会社ヤラカス舘)に入社。広告会社にて飲料、食品、通信、家電、アパレル、施設事業など、さまざまなメーカーや小売業種のマーケティング戦略と、クリエイティブ開発を担当した後、現在はYRK&にて事業コンサルティング責任者に従事。リブランディングに特化したブランディングストラテジストを担当。組織力を強化するインナーブランディングからアプローチし、企業におけるブランド強化を、外と内の両面から支援します。また新規事業立案などのイノベーション創出支援や教育支援。劣化した商品やサービスのリブランディング支援も行い、現場のオペレーション支援(BPR / BPO支援)までを一貫して実戦できることを強みとしています。2022年からはブランドマネージャー養成講座などのビジネススクールも運営。リブランディングのプロ人材育成のため、登壇、セミナー、コラム執筆などのあらゆる支援活動も行っています。

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