2025年4月13日に開幕した大阪・関西万博は、わずか3ヶ月で来場者数1000万人を突破し、連日多くの人々で賑わいをみせています。
前回の速報レポートでは、大阪・関西万博内でヴィーガン・ベジタリアン、ムスリムといった食材制限を持つ海外からの来場者が安心して食事を楽しめるよう、「食の多様性推進ラウンドテーブル(Universal Taste of Round Table=UTRT)」で認証された食材ピクトグラムが飲食施設で使用されている事例をご紹介しました。
現在、大阪・関西万博では、UTRT構成員企業が食材ピクトグラムの活用以外にも、食の多様性対応活動を活発に行っています。本レポートでは、万博内で展開されている、そうした企業の具体的な取り組みをご紹介します。
【UTRTとは】
UTRTは、関西経済連合会が主導し、アジア7か国の経済団体と連携するABCプラットフォーム観光部会と協働のもと、JTB社およびYRK&の2社が共同で座長を務めるプロジェクトです。宗教的戒律やアレルギー、ライフスタイル等により食制限を有する旅行者に対し、安心して飲食を楽しめる環境の整備を目的に、関西エリアを中心とした観光・外食産業の国際化を支援しています。
大阪・関西万博での「食の多様性」対応事例
【事例1】「QBBこれもいいキッチン」(六甲バター株式会社)
六甲バター株式会社の「QBBこれもいいキッチン」は、大阪ヘルスケアパビリオン内「ミライの食と文化ゾーン」で注目を集めています。
動物性素材を一切使わず、チーズ代替植物性食品をはじめとした植物性素材のみでつくられたメニューは、食の新たな可能性を提示しています。
「QBBこれもいいキッチン」は、植物性素材だけ*¹でつくった未来の定番メニューを提供するフードコートレストランです。ALL植物性*¹でありながら、食べごたえ満点、チーズメーカーならではのとろけるおいしさを実現しています。そのおいしさで、これまであまり植物性食品に縁がなかった方にも「これもいい!」と感じていただけるはず、という思いから、植物性食品のさらなる普及・定着の起点となることを目指しています。
食を何より大切なものと考える文化を誇る「食いだおれの街」大阪で開催される万博から、新たな植物性食文化を世界に発信したいとの考えのもと、食事系メニューの監修には「ミシュランガイド京都・大阪2020」以降5年連続三つ星評価を受けた「祇園 さゝ木」の佐々木浩シェフを起用。佐々木シェフは普段自身の料理にチーズを使用しませんが、未来のために食の持続性・食の多様性に取り組みたいというQBBの志に共感し、今回特別にQBBのチーズ代替植物性食品を使い、「これもいいキッチン」オリジナルのメニューの監修を引き受けてくれたということです。(※デザート・ドリンクは佐々木シェフ監修メニューではありません)
QBBこれもいいキッチン提供メニュー
これもナスボロネーゼ
引用:https://expo2025.qbb.co.jp/
厚切りにスライスした太茄子をサクッと揚げたカツを主役に、特製ボロネーゼをオリジナルヴィーガンブレッドに挟んだサンドウィッチ。ジューシーな茄子とコクのあるソース、そしてクリームタイプとシュレッドタイプの2種のチーズ代替植物性食品が絶妙なバランスです。
これもオムキーマカレー
引用:https://expo2025.qbb.co.jp/
夏にぴったりのスパイシーなカレーに、グリルしたゴロッとトマトをトッピング。さらにシュレッドタイプのチーズ代替植物性食品をアレンジしたソースをたっぷりかけました。
大阪新名物?! これも串カツ
引用:https://expo2025.qbb.co.jp/
植物性の代替肉、ざくざく食感が楽しいレンコン、そしてとろける食感がおいしいチーズ代替植物性食品、と3種の植物性具材でつくった新しいおいしさの串カツです。
ミルチーパフェ
引用:https://expo2025.qbb.co.jp/
オーツミルクを使用したミルキーなシェイクに、黒糖タピオカ、グレーズを施した米粉ドーナツをトッピング。クリームタイプのチーズ代替植物性食品を使った特製ホイップがたっぷりのパフェ風ドリンクです。
※1 食塩・香料製剤は植物由来ではありません。ただし動物由来のものは一切含みません。
【事例2】ケンミン食品株式会社「グルテンフリーラーメン」販売数2万杯突破!
ケンミン食品株式会社は、大阪・関西万博会場中心の「静けさの森」に近接する「EARTH TABLE~未来食堂」エリアで、グルテンフリーラーメン専門店「GF RAMEN LAB」を出店し、6種類のグルテンフリーラーメンメニューを展開しています。
このグルテンフリーラーメンは、静岡県にあるケンミン食品の完全グルテンフリー工場で製造され、麺だけでなくスープやチャーシューなどすべてをグルテンフリーで提供しています。スープは利尻昆布を丁寧にひいた出汁を贅沢に使用し、奥深い味わいに仕上がっており、国産豚肉を使った煮豚のチャーシューは、柔らかなロースと肩肉で食べ応えがあり好評です。
6月17日には販売数が累計2万杯を突破するほどの人気となっています。来店されたお客さまからは「小麦アレルギーの子供は、家以外でラーメンを食べたことがありませんでした。万博の店舗で生まれて初めて家族全員でラーメンを食べる経験ができました。私たち夫婦は家族みんなが同じものを一緒に食べられる嬉しさと、全員が満足できるおいしい味をしっかり噛み締めて、本当に幸せなひと時を過ごすことができました」といった感動的なコメントが寄せられています。
ケンミン食品は、「グルテンフリーラーメンを通して、国内だけでなく世界から来場されるお客さまのグルテンフリー需要に応え、そして日本文化であるラーメンを、おいしさと安全に自信を持って提供してまいります。そして会期を経て、すべての方が食べることができるグルテンフリーラーメンが、ラーメンおよび『食』の選択肢としてあたり前にある世界の実現を目指します。」という強い想いをもって展開されているとのことです。
【GF RAMEN LAB.提供メニュー】
引用:https://expo2025.gf-ramen.jp/
万博閉会後も「食の多様性」対応は不可欠に。
ビジネスチャンスはさらなる拡大へ。
大阪・関西万博は10月13日に閉会となりますが、万博閉会後もインバウンド人口は衰えを見せることなく増えていくものと思われます。今後インバウンド人口が増えるに伴い、食の多様性対応はますます必要不可欠なものになっていくでしょう。
それは同時に、大きなビジネスチャンスであるとも言えます。万博で得られた知見と、UTRT構成員企業の活動は、今後の日本における食の多様性対応の新たな基準を築くものであり、企業がこの分野での競争力を高める上で極めて重要です。そういった視点で、今後も大阪・関西万博でのUTRT構成員企業の活動にご注目ください。
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