2025年7月2日(水)、YRK&主催によるビジネスイベント『NEXT RETAIL STRATEGY』が東京にて開催されました。
変化の激しい社会環境の中で、小売業がこれからの時代をどう生き抜き、どのように成長を遂げていくべきか。
本イベントでは、そうした「未来戦略」に焦点を当て、各界の第一線で活躍する経営者・責任者が集結。実践的な知見と率直な意見が交わされ、熱量あふれる時間となりました。
ワイズマート吉野社長が語る
「ありたい姿」を基点に現場を
変える“逆算思考”。
基調講演には、株式会社ワイズマート 代表取締役社長の吉野秀行氏が登壇。
「社員が誇りを持てる会社にしたい」という想いを出発点に、中長期の目標を未来から逆算して設計する「バックキャスティング思考」に基づく経営のあり方が語られました。
吉野氏は、「社員が誇りを持てる会社にしたい」という想いを出発点に、中長期目標を逆算的に設計。全社員への財務情報の公開と、1991年から継続する決算説明会を通じて、社員の経営理解と当事者意識の醸成に取り組んできました。
こうした仕組みと文化の積み重ねにより、社員自らが課題を見つけ、改善提案を行う風土が育成され、結果として離職率は17年連続で5%以下を維持。
その背景には、単なる「管理」ではなく「共に考え、行動する経営」という姿勢があると言います。
さらに講演では、人手不足や原材料高騰、気候変動、地域の空洞化といった、小売業を取り巻く構造的な課題にも触れ、こうした時代だからこそ、「拡大路線」ではなく、小商圏における高密度出店や“生鮮”へのこだわりといった“再現困難性”を武器とする経営が、真の競争優位をもたらすと指南しました。
「現実に流されるのではなく、理想から現実を設計する」。
この逆算思考こそが、次代の小売業界の経営に求められる視座である。
吉野氏の講演は、現場と経営をつなぐ実践的なヒントとして、参加者の皆様に気づきを与える内容となりました。
共感を起点に
値上げを価値へ転換する秘訣。
弊社の常務取締役、深井によるセミナーでは、企業にとって避けては通れない「値上げ」をテーマに、生活者からの理解と共感を得るためのアプローチが紹介されました。
現在の価格上昇の根本原因は、人件費やエネルギーコストの増加、資源の枯渇、各種認証制度への対応など、社会課題を背景とした構造的変化によるものである。こうした背景を正しく伝えられるかどうかが、ブランドの信頼資産を形成する上で大きな分かれ目になる。
さらに、理念の再定義、ストーリーテリングによる価値の可視化、成果の数値化、そして顧客を巻き込む仕組みづくりといった「共感を起点とした価値転換」のステップを解説し、単なる価格改定ではなく“意味を共有する対話”として伝えることの重要性が説きました。
参加者からは、価格への納得感をどう高めるかという問いに対し、実践的かつ本質的なヒントが得られたとの声が多く寄せられました。
“選ばれる企業”に必要な
「採用戦略」。
採用戦略のセッションでは、ALL BLUES代表・横山綾子氏と、BRING事業部長・住康徳氏が登壇。少子高齢化の加速により人材獲得が困難になる中、持続的に人を惹きつけるには「選ばれる企業」になるための仕組みが不可欠であると提起されました。
特に、給与や福利厚生といった条件面だけでなく、「共感できる目的」や「成長を実感できる環境」が、働き続ける動機となるという視点が共有されました。
その実現に向けては、MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)の明文化、理念に基づく評価制度の整備、現場教育の体系化といった取り組みが効果的であるとされ、これらの施策が結果として定着率の向上につながり、採用の安定化に寄与するという“好循環”の事例が紹介されました。
店舗がメディアになる時代に。
最後のセッションでは、小売業が持つ「生活者との日常的な接点」を活かし、“情報発信の場=メディア”として再定義するリテールメディア戦略が紹介されました。
売場、アプリ、ECサイト、POP、レシートなど、従来は販促ツールと位置づけられていた接点を、生活者との継続的な関係構築の手段として活用していくという考え方が共有され、データを活用した広告配信、自社アプリを起点とした販促、店頭サイネージの戦略的な活用など、実例とともに共有された内容には、参加者からも多くの関心が寄せられました。単に商品を売る場ではなく、ブランドの価値を伝える「メディア」として売場を再構築していく視点に、多くの企業が可能性を感じた様子でした。
小売業界の皆様が
新たな気づきを
得られる“場”となりました。
イベントの最後には、登壇者・参加者を交えたQ&Aタイムが開かれ、各社の具体的な課題や構想が活発に語られる時間となりました。
業界・業態を超えたつながりが生まれ、次の実行へ向けたヒントを持ち帰る場として、多くの参加者にとって有意義なひとときとなりました。
YRK&では、今後も小売業界の皆さまに向けたセミナーやイベントを継続的に企画・開催してまいります。ぜひ今後の展開にもご注目ください。