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#3 ESGの視点でみるポジティブイメージブランドランキング

ESGの視点でみる
ポジティブイメージ
ブランドランキング

近年、大きな注目を集めている「ESG投資」や「ESG経営」。ご存知の方も多いと思いますが、ESGとは、環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の頭文字をとっており、その活動の充実度が、投資家にとって企業のサステナビリティを判断する重要な指標となっています。日増しにその熱量は高まってきていますが、果たしてその活動は、企業ブランドにどのような影響を与えるのでしょうか。生活者2万1000人を対象にした日経BP「環境ブランド調査2019」を元に注目企業を見ていきます。

ESG経営がブランド力アップにつながっている3企業

7位 スターバックス コーヒー ジャパン (前年:27位)

ESG活動で大きな注目を集めるのが、スターバックス コーヒーです。スターバックス コーヒーは、環境負荷軽減に向けて世界規模で積極的なESG活動を展開しています。

例えば環境面では、ドリンク提供時のプラスチック製ストローの削減に取り組んでいます。世界に28,000カ所あるスターバックスの店舗では、毎年推計10億本のプラスチック製ストローが使用されており問題となっていました。そこで、スターバックスは、2020年までにプラスチック製ストローの全廃を宣言。もちろん、日本も例外ではありません。

宣言以降は、ストローが必要ないメニューでは、ドリンクボトルでの提供を開始。フラペチーノなど一部のストローが必要なメニューに関しては、紙製のストローで提供しています。その他にも、マイボトルの推奨や、環境に配慮した店舗設計/運営、コーヒー豆のリサイクルなど環境負荷軽減を重んじた様々な活動を展開しています。

その活動の成果が、ブランドイメージ向上に大きく貢献しました。2019年のランキングでは、「有害物質の使用削減」に関するプラスイメージ評価の項目で、前年の166位から2位に急上昇。総合ランキングでも前年の27位から7位まで大きく躍進しました。

有害物質の使用削減に努力している企業ブランド名ランキング

順位 企業ブランド名
1 トヨタ自動車 8.1
2 スターバックス コーヒー ジャパン 6.3
3 東芝 5.9
4 ホンダ 5.5
5 日立製作所 5.4
6 パナソニック 5.3
7 花王 4.9
7 いすゞ自動車 4.9
7 日本たばこ産業(JT) 4.9
10 資生堂 4.8

13位 ローソン (前年:47位)

全国に14,659店舗(2019年2月末現在)展開するコンビニエンスストアのローソンもESG活動に積極的に取り組み、大きくブランドイメージを向上させました。

具体的な取り組みのひとつとして、環境に配慮した店舗設計と運営があります。2020年度までの省エネルギー中期目標として「1店舗当たりの電気使用量を2010年度対比 20%の削減」を掲げ、店舗施設にCO2を冷媒に使用した省エネタイプの要冷機器や空調機器、LED照明などを積極的に導入しました。また、自社サイト内で環境負荷や活動について積極的な情報開示を行なうことで、透明性の高い経営に取り組んでいます。

取り組みは、環境問題だけではありません。業界全体で問題視される人手不足や深夜労働については、業界に先駆け深夜無人店舗の実証実験を開始するなどの取り組みを進めています。来店するお客様からは見えづらい部分ですが、24時間営業という便利さの裏面にある業界の大きな課題に立ち向かうことが、ブランドイメージ向上につながったのかもしれません。

20位 ブリヂストン (前年:30位)

自動車や自転車のタイヤやホイールを主に製造するブリヂストンも順位を向上させました。

ブリヂストンは、ESGの視点を取り入れた2050年以降のグループのあるべき姿を策定し、バックキャスティング思考で2020年の中期目標を制定。例えば、生産拠点での取水量の35%削減やものづくり、CO2排出量35%削減(2005年比)を掲げています。

天然資源と切っても切れない関係にある企業として、先進技術を追求すると同時に、環境問題とも真摯に対峙。この活動は単純に地球への負担を減らすだけではなく、ブリヂストン生産コストの効率化や安定化、工場スタッフの働き方の改善など様々な波及効果をもたらし、生活者により便利で、より気持ちよく使えるブランドという価値を提供しています。

綺麗な山頂より、泥臭い登山を見せる。

ESG投資・経営に関する情報が世の中を賑わせていますが、取り組んでいる企業は、一部の企業に留まっています。これだけ話題になっているにも関わらず、実活動へ広がらない背景には、「完全形でないと発表してはいけない」という思い込みがあるからではないでしようか。

今回の3社や上位にランクインした企業のWEBサイトやレポートを見ていただくとわかりますが、まだ達成率が低い取り組みも存在しています。

これらの実情とランキングの結果のギャップを考えると、ESG活動は、決してキレイゴトだけを見せる活動ではないことがわかります。ブランディング目線で見ても、「購買要因の半分は、ブランドのストーリー」と言われる時代がやってきている中で、重要なのは、「エベレストの山頂に旗を指したという結果」ではなく、「エベレストに登る姿勢や準備、登山中の苦労をブランドの資産に変えていく過程」ではないでしょうか。むしろ、それこそが生活者の共感が得られるポイントだとも考えられます。

今回、3社はまだまだ登山の途中かもしれませんが、山頂に向けた一歩目の大切さとブランディングの関係性を示しています。

ただ一方で、やみくもにスタートすると、方向性を見失う可能性が高いのも事実です。

正しい小さな一歩目を踏み出すためには、自社の強み・弱み・課題の整理を行い、本質的な価値の整理整頓や抽出を行うことが非常に大切です。本質的な価値から発信されるESGの活動は、投資家や取引先に対して好影響を与えるだけではなく、生活者のブランドイメージの向上にもつながっていきます。ビジネス・ファイナンス・ガバナンス・リクルーティング・ブランディングなど経営課題は数多くありますが、全ての課題は一本の道でつながっています。その一本道をつなぐヒントがESG視点の小さな一歩かもしれません。

総合ランキング

順位 企業ブランド名 スコア
1 サントリー 97.7
2 トヨタ自動車 91.2
3 イオン 84.5
4 キリン 80.9
5 パナソニック 78.1
5 ホンダ 78.1
7 スターバックス コーヒー ジャパン 76.7
8 日産自動車 76.3
9 アサヒビール 74.1
10 日本マクドナルド 73.9
11 花王 73
12 セブン&アイ・ホールディングス 72.6
13 日立製作所 70.7
13 ローソン 70.7
15 JXTGエネルギー(ENEOS) 70.1
16 アサヒ飲料 69.9
16 サッポロビール 69.9
18 シャープ 69.7
18 日本コカ・コーラ 69.7
20 ブリヂストン 69.5

引用元:日経BP「環境ブランド調査2019」上位20位