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#6 社会貢献活動認知度ランキング[SDGs]

社会貢献活動認知度
ランキング[SDGs]

持続可能な開発目標「SDGs」。最近、毎日のようによく耳にする言葉の1つです。SDGsとは、2015年9月の国連サミットで採択された「持続可能な開発目標」で、持続可能な世界を実現するための17の目標・169のターゲットから構成されています。このSDGsが今注目されているのは、投資家が投資を行う際に、定量的な財務情報だけではなく、環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)といった課題に対して責任を果たしているのかということを重視して投資先を決定すべきだという考えが、定着してきたことが1つの理由だとされています。それゆえに投資家から投資先として選ばれるため、企業はESGに基づく非財務情報を開示する必要が生まれ、SDGsへの企業の取り組みは活発化しています。

一方で、最近巷では「SDGsウォッシュ」という言葉も耳にするようになってきました。広告やある一部の慈善活動だけを取り上げて、あたかもSDGsに取り組んでいるかのように見せる、実態の伴っていない活動を揶揄する言葉です。端的に言うと、SDGs活動において企業が「言行不一致」の状態になっているということです。

例えば、SDGsの7番目の項目にすべての人が持続可能なエネルギーを使えることが定められていますが、企業からのメッセージとして「持続可能な社会を推進します」と謳っていながらも、実態として限りある化石エネルギーの活用を見直さなかったり、そうしたことを事業の根幹として続けている企業から原料や材料を仕入れたりしていると、それは次第に社会に伝わり「SDGsウォッシュ」のレッテルを貼られてしまいます。そうなるとブランディングの視点において、信頼や共感は薄れ、誰からも愛されない企業・ブランドとなってしまいます。多くの企業がSDGsの取り組みを始める中で、こうした上辺だけの取り組みをしていては、投資家や生活者から簡単に見破られる時代に、確かな信頼を構築している企業とはどんな企業なのでしょうか。

先日、日経リサーチ社より発表された「ブランド戦略サーベイ2019」にある企業の社会貢献活動認知度ランキングの中で「SDGs」に注目して、その傾向を読み解いていきます。

企業ブランド浸透状況のランキング 社会貢献活動認知[SDGs]

<コンシューマー>

ブランド名 2019スコア(%)
1 トヨタ自動車 8.1
2 ソニー 7.1
3 イオン 6.3
3 ホンダ(本田技研工業) 6.3
5 日立製作所 6.2
5 三菱重工業 6.2
7 ダイキン工業 6.1
8 日清食品 6.0
8 オリエンタルランド(東京ディズニーリゾート) 6.0
10 パナソニック 5.8
11 日本マイクロソフト(Microsoft) 5.7
11 花王 5.7
13 セブン-イレブン・ジャパン 5.6
14 サントリー 5.4
14 アップル ジャパン(Apple) 5.4
14 アディダス ジャパン(adidas) 5.4

<ビジネスパーソン>

ブランド名 2019スコア(%)
1 トヨタ自動車 8.1
2 ホンダ(ホンダ技研工業) 7.0
3 ソニー 6.9
4 アップル ジャパン(Apple) 6.7
4 ソフトバンクグループ(ソフトバンク) 6.7
6 日本電信電話(NTT) 6.6
6 NTTドコモ 6.6
8 サントリー 6.5
8 日産自動車 6.5
10 NTTコミュニケーションズ 6.4
11 パナソニック 6.3
12 三井物産 6.1
12 村田製作所 6.1
12 三菱商事 6.1.
12 タニタ 6.1

引用元:日経リサーチ「ブランド戦略サーベイ(2019年)」

<ブランド戦略サーベイ2019 調査実施概要>

調査時期: 2019年6~7月
測定社数: コンシューマー編 日経リサーチ・提携協力会社インターネットモニター登録の全国16歳以上の一般個人(男女)
ビジネスパーソン編 日経リサーチ・提携協力会社インターネットモニター登録の全国のビジネスパーソン(男女)
調査手法: インターネット調査
回答者数: コンシューマー編 1社につき約790人
ビジネスパーソン編 1社につき約770人
調査主体: 株式会社日経リサーチ

名だたる企業がランクインしている中、コンシューマーとビジネスパーソンともに1位を獲得しているのがトヨタ自動車。SDGsの17項目とは別に、2015年10月に「トヨタ環境チャレンジ2050」を公表し、環境への取り組みとして「自社独自の目標」を掲げています。「新車CO2ゼロチャレンジ」や「循環型社会・システム構築チャレンジ」など自社が持続可能な社会を目指すために、成し遂げるべき6つのチャレンジに取り組み、業界トップの自動車メーカーとしてクルマの環境負荷をゼロに近づける取り組みを通じて、持続可能な社会の実現に貢献しています。

また、ソニー(コンシューマー部門2位、ビジネスパーソン部門3位)は、SDGsの9番目の項目において、「Seed Acceleration Program」(SAP)を立ち上げ、産業にイノベーションを起こすために、スタートアップの創出と事業運営を支援するプログラムを、既に2014年に開設し、2018年の段階で、社内で国内外700件の新規事業案件を審査し33件を育成、13の新事業を立ち上げています。

同様にApple(コンシューマー部門14位、ビジネスパーソン部門4位)も「地球から何も取らずに製品を作る」という常識では不可能のように思われる高い目標を掲げ、実際に2014年にはオフィス、アップルストア、データセンターといった全米に存在するすべての自社保有施設の電力を100%再生可能エネルギーで賄うことに成功しています。

他に流通大手のイオン(コンシューマー部門3位)は、PBのトップバリュにおいて「安全・安心」と「自然環境への配慮」にこだわったグリーンアイシリーズを1993年からスタートさせており、コンシューマー接点でわかりやすい取り組みを早期から行っています。

こうした上位企業の取り組みを見てみると、なぜ自社はSDGs活動をしているのかという必然性のある文脈が重要であることが読み取れます。

上位にランクインしている複数の企業のSDGsへの取り組みを見ていくと、共通項として読みとれるのが、国連サミットでSDGsが採択される以前から、そもそも企業理念の中に持続可能な社会を目指す視点が存在し、かつ日頃からそれを実行しているという点です。トヨタ自動車であれば、トヨタグループ創始者の考え方をまとめた「豊田綱領」に取り組みの根底があります。基本理念にも記されており、考え方や価値観が国連の目指すものと一致しているため、そもそもの活動とSDGsが合致した形となっています。つまり、本業の中で持続可能なビジネスの仕組みを構築しており、SDGsが社会で注目される以前から取り組んでいることが、メッセージの文脈に盛り込まれていることが大切だといえます。

日本には、昔から持続可能を軸にした活動や企業努力を行っている会社が多く存在します。現に日本は、100年以上続く企業が世界で一番多い国です。時代が変わっても生活者から常に必要とされる企業を100年以上持続させるためには、自社の損益だけではなく、社会と共生することや、持続可能な社会を目指す視点は必須であり、自らそうした行動を行っている企業も少なくないはずです。考え方は創業当時から存在する、もしくは活動を行っているのにも関わらず、点での取り組みとなってしまっており、文脈として成立しておらず、うまくメッセージが伝わらないのは、非常にもったいないことです。

そもそも存在している考え方や活動を、正しく文脈を構築してメッセージすることは、企業価値の再定義を行うことであり、リブランディングそのものです。それにより、生活者の接点となる商品やサービスへの信頼を生む結果にもつながります。

トヨタのように、SDGsに取り組む文脈が明確で共感できること。そして共感を生むためには、アップルのように活動がビジブル(可視化されている)であること。さらに、イオンのPB展開のように、活動した結果が我々の生活動線上の実態として伴っていること。これらが非常に重要です。SDGsを新たな社会貢献活動だと考えるのではなく、そもそも存在していた理念や現実のビジネスと照らし合わせて、自社の企業ブランディング活動の文脈と合致させるべきだといえるでしょう。