R&D
株式会社YRK andでは、株式会社日経リサーチ「ブランド戦略サーベイ」のデータを基に、BtoB企業を対象とした2019年(2017年との上昇幅)ブランド力(PQ)“上昇ランキング”を作成しました。
今「ものづくり日本」を支えるBtoB企業を取り巻く環境は、IoT・AIなどのデジタルトランスフォーメーションの加速や、アジア圏企業の躍進が顕著なグローバル化の加速、少子高齢化社会に向けた品質・ノウハウ・技術の均一化とパッケージ化へのシフトなど、劇的に変化しています。その中で、近年でブランド力を高めている企業からどういった動向が読み取れるかを探りました。
順位 | ブランド名 | 2019 総合PQ |
上昇幅 | 2017 総合PQ |
---|---|---|---|---|
1 | ルネサスエレクトロニクス | 442 | 56 | 386 |
2 | ジャパンディスプレイ | 437 | 54 | 383 |
3 | 伊藤忠テクノソリューションズ(CTC) | 422 | 37 | 385 |
4 | ゼンリン | 544 | 31 | 513 |
5 | キーエンス | 536 | 30 | 506 |
5 | NTN | 460 | 30 | 430 |
7 | 川崎重工業 | 573 | 27 | 546 |
8 | 日本電産 | 516 | 26 | 490 |
8 | ファナック | 483 | 26 | 457 |
10 | ミネベアミツミ | 435 | 23 | 412 |
11 | ウェザーニューズ | 539 | 22 | 517 |
12 | ローム | 506 | 21 | 485 |
13 | 日本ヒューレット・パッカード(HP) | 508 | 20 | 488 |
13 | SCSK | 452 | 20 | 432 |
15 | 島津製作所 | 555 | 18 | 537 |
※上記は、日経リサーチ「ブランド戦略サーベイ(2019年)」を基に、YRK&が独自で抽出したランキングです。
※PQ … 企業ブランド知覚指数(PQ= Perception Quotient)
【ランキングについて】
抽出条件:日経リサーチ ブランド戦略サーベイ対象企業のうち、2019年と2017年の差分を取り、そのポイントの高い順に並び替え。そのうちBtoB企業をYRK&が独自で抽出。
<ブランド戦略サーベイ2019 調査実施概要>
調査時期: | 2019年6~7月 |
測定社数: | コンシューマー編 日経リサーチ・提携協力会社インターネットモニター登録の全国16歳以上の一般個人(男女) ビジネスパーソン編 日経リサーチ・提携協力会社インターネットモニター登録の全国のビジネスパーソン(男女) |
調査手法: | インターネット調査 |
回答者数: | コンシューマー編 1社につき約790人 ビジネスパーソン編 1社につき約770人 |
調査主体: | 株式会社日経リサーチ |
※ここでの「ブランド力」とは、PQ(=企業ブランド知覚指数)に基づいた総合評価です。
※このブランドランキングは、企業やブランドの価値を表すものではありません。
※あくまで当社分析による市場からの期待値であり、経営状態などは考慮しておりません。
1位の「ルネサスエレクトロニクス」は、NECの社内カンパニーの半導体事業から始まり、日立製作所、三菱電機の半導体部門との統合により設立。これからの車社会に対応したリチウムイオンバッテリーマネジメントICの開発や、5Gに対応したスマートフォン用アンテナユニットの開発など、1000社以上のパートナー企業とのネットワークでクライアントビジネスの市場機会を創出。IoTを中心にさらに加速する双方向のつながりやリアルタイム性が求められる社会へ向け、半導体の会社から「あらゆるものをつなぐ(コネクテッドワールド)会社」へ事業をピボットし、社会やテクノロジーの変化に合わせてビジネスを変革しています。
続いて、2位「ジャパンディスプレイ」に目を向けると、あらゆるインターフェースに欠かせない中小型LCDディスプレイの開発・設計・製造・販売を行い、グローバル市場への展開、事業競争力を強化したスマートフォンや小型ディスプレイ事業の展開だけではなく、センサ分野への新規参入。従来の“視聴”領域のみでの接点だけではなく、見・聞き・触れ・香り・味わえるという五感での接点拡大に向けて、ディスプレイメーカーにとどまらず「世界のあたり前を、はるかに超えた体験をつくる会社」へ事業拡張を行っています。
さらに3位「伊藤忠テクノソリューションズ」では、システム開発・運用・保守・管理を軸に、ネットワークビジネスにおける5G対応など、IT先進企業280社とのオープンイノベーションな共同開発から、持続可能社会の実現に向けた再生可能エネルギー活用支援や、フードロス削減に向けた新たな事業を展開。システム会社の領域を超え、「テクノロジーで社会の課題を解決する会社」として自社の活動フィールドを拡張しています。
4位「ゼンリン」は、詳細な地図情報の提供を柱として、1984年からいち早くデジタル領域に参入し、カーナビ時代の到来を見据えたデジタル化を実現しました。これまでに先行投資を行い整備した“地図情報”が大きな資産であり、他企業と共同で住宅地図自動化システムの確立からサブスクリプション事業、自動運転時代に向けた高精度の3Dマップの整備を進めるスマートモビリティ事業、地方創生事業による持続可能な社会実現への取り組みなど、他社にはないこの資産を活用し様々な新事業展開。“Maps to the Future”のスローガンの通り、「地図情報で未来を創造する会社」へと時代に合わせたアップデートを果たし、さらなる事業拡張を続けています。
最後に、6位「NTN」を見てみると、1918年に、ボールベアリングの研究製作からスタートし、自動車に使用するドライブシャフトの製造はグローバルにいち早く展開。ベアリングについても自動車、建設・鉱山機、航空機、新幹線、風力発電など、あらゆる業界における回転部を下支えしてきましたが、近年では地球環境と省エネルギーを考える「NTN回る学校」という取り組みを各地で開催。未来のクルマ社会の実現に向けた、エコドライブを可能にするEVシステムなど、「世界をなめらかにする仕事。」へと変貌を遂げ、今年から女優を起用したCMでメッセージしています。
こうしたことから、共通項として見えてくるのは、従来のビジネスの枠組みにとらわれないように社会の変化に合わせて、事業を広義に再定義している点です。あらためて自社の事業について再定義を図り、それを明文化して社内外のステークホルダーへ発信を行うことで、事業フィールドを広げて、新たな市場の創造を図っていることがわかります。
平成から令和になった現在、IoT・AIの劇的な進化とグローバル化の加速、さらに自社完結型から他企業とのパートナーシップによる共創型への変革など市場環境が大きく変化しています。
そんな市場環境において、企業も今まで通りの事業を続けているだけではサスティナブルな経営は難しく、短期的な利益は下がってしまいます。
しかし、先述の通り企業がマーケットの変化を捉え、自社の「事業の再定義」を行い、新たな市場創造を図ろうとしている企業姿勢がビジネスパーソンや生活者に伝われば、「短期的な業績は厳しくともブランド力は維持・向上できる」ということが見えてきました。
事業を再定義するということは、自社を取り巻く課題を洗い出し、未来を見据えて自社の本質的な価値を磨くこと。つまりリブランディングという手法そのものだといえます。
これまでBtoB企業とは、従来の業界という枠組みの中での競争のみで、業界内での認知度や信頼があれば良いという時代でした。しかし、人材難の中でも優秀な人材を確保し、新たなフィールドに打って出るための共創パートナーを見つけて市場を創造していくためには、ブランディングが必要不可欠な時代になったといえます。
「ブランディング=BtoC企業」という概念はもはや過去の考え方であり、これからはBtoB企業にとっても経営戦略上、ブランディングは重要な課題だと考えられます。
日本のBtoB企業こそ、今ブランディングが重要な時代になってきました。